社会政策におけるケアの労働としての可視化 : 介護労働の評価からみた介護保険制度の課題(<特集>ジェンダー平等と社会政策)
介護保険制度は,家族内で多くの女性が無償で引き受けていた介護を社会全体で支える「介護の社会化」の理念を掲げ,2000年から実施された。社会保険の仕組みと疑似市場化による供給システムの拡張は,介護の賃労働化の進展でもあった。こうした動向は,日本の社会政策が,「生産労働・賃労働・男性」と「再生産労働・不払い労働・女性」の労働編成を前提とした「男性稼ぎ主」型から離脱する動きとも捉えられるが,女性が多くを担うケア労働の可視化のあり方自体の問題が顕在化する過程でもある。本稿では,介護保険制度を通じた介護労働の可視化が,労働・雇用条件等の経済評価の位相とあわせ,労働の価値基準という規範的位相においても深刻...
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| Published in | 社会政策 Vol. 5; no. 3; pp. 25 - 37 |
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| Main Author | |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
社会政策学会
2014
Japan Association for Social Policy Studies |
| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 1883-1850 2433-2984 |
| DOI | 10.24533/spls.5.3_25 |
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| Summary: | 介護保険制度は,家族内で多くの女性が無償で引き受けていた介護を社会全体で支える「介護の社会化」の理念を掲げ,2000年から実施された。社会保険の仕組みと疑似市場化による供給システムの拡張は,介護の賃労働化の進展でもあった。こうした動向は,日本の社会政策が,「生産労働・賃労働・男性」と「再生産労働・不払い労働・女性」の労働編成を前提とした「男性稼ぎ主」型から離脱する動きとも捉えられるが,女性が多くを担うケア労働の可視化のあり方自体の問題が顕在化する過程でもある。本稿では,介護保険制度を通じた介護労働の可視化が,労働・雇用条件等の経済評価の位相とあわせ,労働の価値基準という規範的位相においても深刻な問題を抱えていることを,訪問介護を例に示す。その上で,介護保険制度が規範的に要請する介護労働観の特殊性,その特殊性が制度の持続性に課す限界を指摘し,今後の介護労働評価の政策的課題を提示する。 |
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| ISSN: | 1883-1850 2433-2984 |
| DOI: | 10.24533/spls.5.3_25 |