高濃度懸濁物質を含む環境水中の放射性セシウム定量へのゲル化法の適用

東京電力福島第一原子力発電所の事故以降,環境中に拡散した放射性セシウムのモニタリングが広く行われている.環境水中の放射性セシウム濃度の測定は,試料を直接測定する方法で行われている.しかし,懸濁物質(SS)濃度が高い場合,測定中のSSの沈降によりジオメトリが変化し,正確な値を算出できない可能性がある.そこで,本研究では高濃度SSを含む環境水中の放射性セシウム濃度の測定において,ジオメトリを一定に保つ手法としてゲル化法を開発した.まず,放射性セシウム濃度測定値へのSS沈降の影響を確認し,ゲル化法及び従来型のろ過法の適用範囲を検討した.濁水の直接測定の結果,SS濃度100 mg L−1以上で測定結果...

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Published in分析化学 Vol. 62; no. 6; pp. 513 - 519
Main Authors 土屋, 貴史, 畠山, 雅人, 北島, 枝織, 保高, 徹生
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本分析化学会 2013
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ISSN0525-1931
DOI10.2116/bunsekikagaku.62.513

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Summary:東京電力福島第一原子力発電所の事故以降,環境中に拡散した放射性セシウムのモニタリングが広く行われている.環境水中の放射性セシウム濃度の測定は,試料を直接測定する方法で行われている.しかし,懸濁物質(SS)濃度が高い場合,測定中のSSの沈降によりジオメトリが変化し,正確な値を算出できない可能性がある.そこで,本研究では高濃度SSを含む環境水中の放射性セシウム濃度の測定において,ジオメトリを一定に保つ手法としてゲル化法を開発した.まず,放射性セシウム濃度測定値へのSS沈降の影響を確認し,ゲル化法及び従来型のろ過法の適用範囲を検討した.濁水の直接測定の結果,SS濃度100 mg L−1以上で測定結果は設定濃度の120% 以上となりジオメトリ変化の影響を受けることが確認された.濁水中の全放射性セシウムを対象とするゲル化法は100~10000 mg L−1の高濃度濁水においても誤差範囲15% 以内であった.ろ過法はSS由来の放射性セシウム濃度に対する結果を示すが,SS濃度が100 mg L−1においても適用可能であった.以上から,ゲル化法が高濃度のSSを含む濁水の全放射性セシウム濃度の測定に対して有効であることが示された.
ISSN:0525-1931
DOI:10.2116/bunsekikagaku.62.513