変形性膝関節症における円背姿勢と膝伸展筋力の関連

【目的】円背は高齢者の特徴的な姿勢であり、下肢全体が屈曲位になるため膝伸展筋力に影響すると考えられる。今回この関係を変形性膝関節症(以下膝OA)との関連について検討し報告する。【対象】新潟県十日町市松代地区にて、2007年住民検診で協力を得られた1347名を対象とした。【方法】対象者全員に対し、医師による視触診の姿勢評価及び膝可動域測定と簡易筋力測定器(アルケア社製)を用いた膝伸展筋力測定を行った。また、膝関節のX線撮影を行い、膝OA進行度について検討した。X線の膝OA病期は、K-L分類に準じ5段階とし、整形外科医1名が評価した。膝OA進行度で左右のどちらか一方ないし両方がgrade2以上であ...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 29; p. 210
Main Authors 渡辺, 博史, 古賀, 良生
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2010
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.29.0.210.0

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Summary:【目的】円背は高齢者の特徴的な姿勢であり、下肢全体が屈曲位になるため膝伸展筋力に影響すると考えられる。今回この関係を変形性膝関節症(以下膝OA)との関連について検討し報告する。【対象】新潟県十日町市松代地区にて、2007年住民検診で協力を得られた1347名を対象とした。【方法】対象者全員に対し、医師による視触診の姿勢評価及び膝可動域測定と簡易筋力測定器(アルケア社製)を用いた膝伸展筋力測定を行った。また、膝関節のX線撮影を行い、膝OA進行度について検討した。X線の膝OA病期は、K-L分類に準じ5段階とし、整形外科医1名が評価した。膝OA進行度で左右のどちらか一方ないし両方がgrade2以上である者をOA群(女性394名:73.0±7.06歳、男性193名:75.4±6.65歳)と、左右ともgradeが0、1である者を非OA群(女性372名:60.1±12.48歳、男性388名:63.4±13.49歳)に分け、群別・性別に円背と膝屈曲拘縮及び膝伸展筋力との関連を検討した。姿勢評価では腰椎前弯が消失または後弯している者を円背とし、膝屈曲拘縮では左右のどちらか一方ないし両方が拘縮している者を拘縮ありとした。膝伸展筋力では左右の合計値を検討項目とした。統計処理は多変量解析を行い有意水準は5%未満とした。【結果】円背と膝屈曲拘縮の関係で女性の膝屈曲拘縮の割合は、OA群では円背である者の53.4%、円背でない者の27.9%、非OA群では円背である者の20.1%、円背でない者の1.9%であり、OA群、非OA群ともに円背である者の膝屈曲拘縮の割合が有意に高く関連を認めた。男性の膝屈曲拘縮の割合は、OA群では円背である者の43.8%、円背でない者の30.8%、非OA群では円背である者の24.0%、円背でない者の5.8%であり、非OA群のみ円背である者の膝屈曲拘縮の割合が有意に高く関連を認め、OA群では関連が認められなかった。円背と膝伸展筋力の関係で女性では、OA群、非OA群ともに円背である者の膝伸展筋力が有意に低く関連を認めた。男性では、非OA群のみ円背である者の膝伸展筋力が有意に低く関連を認め、OA群では関連が認められなかった。【考察】今回の結果から円背と膝屈曲拘縮及び膝伸展筋力の関係は、女性では膝OA進行度に左右されないことが示され、男性より関連性が強いことが示唆された。そして、理学療法において膝関節機能の改善だけでなく全身的な姿勢調整にも着目することが重要であると示された。今後はこれらの因子の因果関係を縦断的に検討していく。
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ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.29.0.210.0