陽性荷電蛋白硫酸プロタミンの肺損傷指標値に及ぼす影響

血管内皮細胞の表面は, ヘパリン様物質をはじめとする陰イオンの存在により陰性に荷電している1, 2). また肺胞隔壁の基底膜は肺血管内皮細胞側が陽性に, 肺胞上皮細胞側が陰性に荷電していることが知られている3). 生体内pHの下ではアルブミンをはじめとする血漿蛋白の多くは陰性に荷電しており4), 血漿蛋白の肺間質や肺胞腔への漏出防止に電気的な力として関与している可能性が指摘されている3, 5). 近年, 肺微小血管傷害の機序の一つとして陽イオンによる肺血管内皮および基底膜の陰性電荷の中和作用が指摘されている6, 7). ヘパリンの中和剤として臨床的にも広く使用されている硫酸プロタミンは陽イオン...

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Published in炎症 Vol. 13; no. 3; pp. 277 - 282
Main Authors 田坂, 定智, 浦野, 哲哉, 仲村, 秀俊, 金沢, 実, 長谷川, 直樹, 石坂, 彰敏, 川城, 丈夫, 鈴木, 幸男, 坂巻, 文雄, 佐山, 宏一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本炎症・再生医学会 1993
日本炎症学会
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ISSN0389-4290
1884-4006
DOI10.2492/jsir1981.13.277

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Summary:血管内皮細胞の表面は, ヘパリン様物質をはじめとする陰イオンの存在により陰性に荷電している1, 2). また肺胞隔壁の基底膜は肺血管内皮細胞側が陽性に, 肺胞上皮細胞側が陰性に荷電していることが知られている3). 生体内pHの下ではアルブミンをはじめとする血漿蛋白の多くは陰性に荷電しており4), 血漿蛋白の肺間質や肺胞腔への漏出防止に電気的な力として関与している可能性が指摘されている3, 5). 近年, 肺微小血管傷害の機序の一つとして陽イオンによる肺血管内皮および基底膜の陰性電荷の中和作用が指摘されている6, 7). ヘパリンの中和剤として臨床的にも広く使用されている硫酸プロタミンは陽イオンである8). 灌流肺を用いた実験では硫酸プロタミン投与により肺血管透過性亢進, 肺水分蓄積が生じたと報告されている9). またVehaskariらは, あらかじめ腎臓を摘除したラットにプロタミンを投与することにより血漿アルブミン, 血管内水分が血管外に移動したと報告している10). いずれの実験も灌流肺や腎摘出という特殊環境で行われたものである. 本実験では硫酸プロタミンをモルモットの静脈内に投与し, in vivoで肺血管外水分量と肺血管透過性に及ぼす影響を検討することを目的とした.
ISSN:0389-4290
1884-4006
DOI:10.2492/jsir1981.13.277