窒素化ナノカーボン薄膜の構造,電気化学特性と分析への応用

アンバランストマグネトロン(UBM)や電子サイクロトロン共鳴(ECR)スパッタリング装置を用いて作製したナノカーボン薄膜は,安定で広い電位窓を有している.著者らは窒素ガス共存下のスパッタリングや,アンモニアガス存在下の熱処理,窒素やアンモニアガス存在下のプラズマ処理を行うことで,窒素原子を含むナノカーボン膜を作製した.スパッタガスや熱処理の際の窒素ガスの濃度を変えることでカーボン膜内の窒素濃度,sp2/sp3比,窒素を含む構造の異なる官能基の割合を制御することができる.膜中の窒素濃度2〜10% で電気化学活性種が最も可逆な応答を示した.また,膜中のピリジン構造リッチなとき,グラファイト窒素がリ...

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Published in分析化学 Vol. 70; no. 9; pp. 511 - 520
Main Authors 加藤, 大, 丹羽, 修, 太田, 早紀, 矢嶋, 龍彦, 鎌田, 智之, 芝, 駿介
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 公益社団法人 日本分析化学会 05.09.2021
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ISSN0525-1931
DOI10.2116/bunsekikagaku.70.511

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Summary:アンバランストマグネトロン(UBM)や電子サイクロトロン共鳴(ECR)スパッタリング装置を用いて作製したナノカーボン薄膜は,安定で広い電位窓を有している.著者らは窒素ガス共存下のスパッタリングや,アンモニアガス存在下の熱処理,窒素やアンモニアガス存在下のプラズマ処理を行うことで,窒素原子を含むナノカーボン膜を作製した.スパッタガスや熱処理の際の窒素ガスの濃度を変えることでカーボン膜内の窒素濃度,sp2/sp3比,窒素を含む構造の異なる官能基の割合を制御することができる.膜中の窒素濃度2〜10% で電気化学活性種が最も可逆な応答を示した.また,膜中のピリジン構造リッチなとき,グラファイト窒素がリッチな膜や窒素を含まないカーボン膜と比較して酸素還元の過電圧低下が観測された.さらに,生体分子の測定では,L-アスコルビン酸,ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)の酸化反応の電子移動速度が向上することがわかった.さらにアンモニア雰囲気下でプラズマ処理を行ったナノカーボン膜では,生体適合性が大きく向上し,ウシ血清アルブミン(BSA)存在下でも可逆に活性種の測定を行うことができた.また,酸化されると電極上に吸着しやすくなり感度が低下するセロトニン(神経伝達物質)のボルタンメトリ測定を繰り返し行っても感度が低下しないことが確認された.
ISSN:0525-1931
DOI:10.2116/bunsekikagaku.70.511