琵琶湖における水質管理のあり方に関する研究と課題

琵琶湖をはじめとする国内の指定湖沼の一部では著しい水質汚濁が減少した一方で,生態系の異変が起きている。水質を維持しつつ生態系を保全するためには,両者のバランスをとる評価指標が必要である。本稿では私どもがこれまでに実施した琵琶湖における有機物の収支解析の結果を示すと共に,関連する湖沼水質保全分野のレビューを紹介する。有機物の収支解析の結果,琵琶湖沖帯の生物生産は,微生物食物連鎖に比べて生食食物連鎖が主体であることが確認された。さまざまな状況証拠から,湖沼の水質管理では,栄養塩を減らすだけでなく,魚介類資源の保全に適度な濃度を設定できる可能性が示された。よって,水域の有機物や栄養塩の収支解析は,水...

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Published in地球環境 Vol. 25; no. 1-2; pp. 79 - 86
Main Authors 佐藤, 祐一, 岡本, 高弘, 早川, 和秀, 後藤, 直成, 冨岡, 典子, 永田, 貴丸, 中野, 伸一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国際環境研究協会 2020
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ISSN1342-226X
2758-3783
DOI10.57466/chikyukankyo.25.1-2_79

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Summary:琵琶湖をはじめとする国内の指定湖沼の一部では著しい水質汚濁が減少した一方で,生態系の異変が起きている。水質を維持しつつ生態系を保全するためには,両者のバランスをとる評価指標が必要である。本稿では私どもがこれまでに実施した琵琶湖における有機物の収支解析の結果を示すと共に,関連する湖沼水質保全分野のレビューを紹介する。有機物の収支解析の結果,琵琶湖沖帯の生物生産は,微生物食物連鎖に比べて生食食物連鎖が主体であることが確認された。さまざまな状況証拠から,湖沼の水質管理では,栄養塩を減らすだけでなく,魚介類資源の保全に適度な濃度を設定できる可能性が示された。よって,水域の有機物や栄養塩の収支解析は,水質と生態系保全を両立させるための評価手法として有効と考えられる。
ISSN:1342-226X
2758-3783
DOI:10.57466/chikyukankyo.25.1-2_79