拘束型心筋症により海外心臓移植を行った2歳児の移植前理学療法の経験
【目的】 我々は,拘束型心筋症により心臓移植が適応と判断された2歳児の心臓移植前理学療法を経験した.臓器移植法の改正(2010年7月施行)に伴い,本邦においても低年齢での小児心臓移植が,今後も行われる可能性が考えられる.今回,本症例の渡航前理学療法介入について,その経過,内容と注意点について報告する.なお,本症例の公表に関して,事前に両親へ説明し同意を得た. 【症例】 2歳男児.既往として超低出生体重児(在胎26週6日,出生体重880g),脳室周囲白質軟化症,慢性肺疾患を合併していた.精神運動発達は乳幼児精神発達質問紙にて12~15ヶ月相当(つかまり立ちとわずかに伝い歩きが可能,言語は単語2,...
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Published in | 関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 29; p. 245 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
2010
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Subjects | |
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ISSN | 0916-9946 2187-123X |
DOI | 10.14901/ptkanbloc.29.0.245.0 |
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Summary: | 【目的】 我々は,拘束型心筋症により心臓移植が適応と判断された2歳児の心臓移植前理学療法を経験した.臓器移植法の改正(2010年7月施行)に伴い,本邦においても低年齢での小児心臓移植が,今後も行われる可能性が考えられる.今回,本症例の渡航前理学療法介入について,その経過,内容と注意点について報告する.なお,本症例の公表に関して,事前に両親へ説明し同意を得た. 【症例】 2歳男児.既往として超低出生体重児(在胎26週6日,出生体重880g),脳室周囲白質軟化症,慢性肺疾患を合併していた.精神運動発達は乳幼児精神発達質問紙にて12~15ヶ月相当(つかまり立ちとわずかに伝い歩きが可能,言語は単語2,3種類を表出)であった. 【現病歴】 1歳11ヶ月時に全身性浮腫を認め,徐々に活動性が低下した.その後,浮腫の増悪と頻呼吸,チアノーゼを認め緊急入院した.レントゲン上で,心拡大(CTR0.56)と胸水貯留,心エコー上は,重度の三尖弁・僧帽弁閉鎖不全,心嚢液の貯留を認め,その後,心嚢生検などを行い拘束型心筋症と診断された.心不全の改善を目的として,水分バランスの管理など内科的に加療を行ったが,心臓移植適応との判断に到った.カテーテル検査等の精査を終え,全身状態の落ち着いた入院後6ヶ月経過時よりベッドサイドにて理学療法開始した.2ヶ月間の介入後に心臓移植を目的として渡航し,2ヶ月後に心臓移植が行われた. 【理学療法経過】 介入当初は寝返り,受動的な割座位保持は可能であったが,起き上がり,這行,立ち上がりは認められなかった.理学療法の介入は,心負荷を考慮してセミファーラー位やクッションチェア坐位でのボールやクッションへのキッキング,キャッチボールを中心に行った.また,発達の経緯から下肢の運動経験が不足していると考えた.下肢の運動は,運動発達,リコンディショニングの両面で効果的と考えた.本児は,人見知りが強く,血圧測定などでも啼泣してしまうため,リスク管理として,看護記録のバイタルサインを参考に,機嫌,表情,呼吸,体温など身体所見を目安に全身状態を勘案しながら運動負荷量を調整した.内科的全身管理と理学療法の介入により,入院以来行っていなかった這行とつかまり立ちが再びみられるようになった. 【おわりに】 成人の心臓移植前における理学療法介入が有効であることは数多く報告されているが,小児においても効果的であると考える.小児の場合,運動課題の心負荷への影響はもちろん,啼泣による心負荷の増大と体力の消耗を考慮しながら,楽しさ,嬉しさなどの情緒的交流を通じて信頼関係を構築することが重要である. |
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Bibliography: | 32 |
ISSN: | 0916-9946 2187-123X |
DOI: | 10.14901/ptkanbloc.29.0.245.0 |