大腿骨転移性骨腫瘍に対し腫瘍用人工骨頭置換術を施行された患者の理学療法を経験して

【目的】 現在、悪性腫瘍に対する手術療法、化学療法、放射線療法など集学的治療法の進歩により、癌患者の予後の延長が得られている。しかし骨転移に伴う疼痛や全身性機能障害のため、日常生活動作に制限を生じ、理学療法を必要とする患者も少なくない。今回我々は、大腿骨転移性骨腫瘍に対し腫瘍用人工骨頭置換術を施行され、実用歩行獲得と早期在宅復帰に至った2例の理学療法(PT)を経験したので報告する。なお、発表に際し本症例には主旨を説明し了承を得ている。 【症例紹介と理学療法経過】 症例1.83歳女性。乳癌術後、多発性骨転移。入院前歩行困難、四つ這いにて自宅内移動。右股関節痛が出現し、PET-CTにて右大腿骨に転...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 30; p. 139
Main Authors 深田, 和浩, 細谷, 学史, 小泉, 浩平, 今西, 淳悟, 矢澤, 康男, 牧田, 茂, 秦, 和文, 鳥尾, 哲矢, 小野寺, 恭子, 内田, 龍制
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2011
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.30.0.139.0

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Summary:【目的】 現在、悪性腫瘍に対する手術療法、化学療法、放射線療法など集学的治療法の進歩により、癌患者の予後の延長が得られている。しかし骨転移に伴う疼痛や全身性機能障害のため、日常生活動作に制限を生じ、理学療法を必要とする患者も少なくない。今回我々は、大腿骨転移性骨腫瘍に対し腫瘍用人工骨頭置換術を施行され、実用歩行獲得と早期在宅復帰に至った2例の理学療法(PT)を経験したので報告する。なお、発表に際し本症例には主旨を説明し了承を得ている。 【症例紹介と理学療法経過】 症例1.83歳女性。乳癌術後、多発性骨転移。入院前歩行困難、四つ這いにて自宅内移動。右股関節痛が出現し、PET-CTにて右大腿骨に転移性骨腫瘍を認めた。外来にて放射線治療を実施したが、約2ヶ月後転倒にて右股関節痛が出現、単純X線にて右大腿骨頸部病的骨折と診断し、当院へ入院した。入院翌日、右腫瘍用人工骨頭置換術(セメント固定)施行。術後第4病日目からPT介入、疼痛に合わせ荷重下にて平行棒内起立・歩行練習開始。第7病日目からwalker歩行練習開始、第8病日目には病棟内監視下walker歩行開始とした。第14病日目にT-cane歩行練習開始、第19病日からは在宅復帰に向けた横歩きや手摺り歩行練習を実施し、家族と環境調整を随時実施した。第30病日目に自宅内T-cane歩行自立、ポータブルトイレ自立にて自宅退院となった(Motor-FIM:61点)。 症例2.73歳女性。S状結腸癌術後、肝転移術後、肺転移術後、左大腿骨骨転移。入院前歩行困難、車椅子にて移動。左股関節痛が出現し、単純X線及びPET-CTにて左大腿骨転移性骨腫瘍と左大腿骨頸部病的骨折と診断し、当院へ入院した。入院後第6病日目に左腫瘍用人工骨頭置換術(セメント固定)施行。術後第7病日目からPT介入、車椅子乗車練習開始。第12病日目から左下肢接触接地での平行棒内起立・歩行練習開始。第18病日目から疼痛に合わせ荷重下にて平行棒内起立・歩行練習開始。第19病日目からwalker歩行練習開始、第21病日目には病棟内監視下walker歩行開始とした。第22病日目にT-cane歩行練習開始、第37病日目に試験外泊を実施し、第45病日目に自宅内T-cane歩行自立にて自宅退院となった(Motor-FIM:76点)。 【考察とまとめ】 腫瘍用人工関節は、局所手術として予後半年以上を見込める場合に施行されることが多い。疼痛を軽減させ、早期離床が可能であるが、中殿筋や大殿筋を切離し人工関節に縫着するため、術後股関節周囲の積極的な筋力強化は困難である。また本症例は、廃用症候群による全身性の筋力低下、体力低下を来していたが、歩行能力の再獲得と在宅復帰に至る良好な結果が得られたと考える。
Bibliography:P1-3-025
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.30.0.139.0