全国社会科教育学会の拡大期の『社会科研究』はどのような視座を社会科教育研究にもたらしたのか

本稿では,学会拡大期の『社会科研究』の第61号から第70号までに掲載された論文をもとに,これらの論文が社会科教育研究にどのような視座をもたらしたのかを3つの類型による研究動向から明らかにした。第一に,規範的・原理的研究の動向では,「法教育研究への視座」「社会科評価研究への視座」「外国研究への視座」「シティズンシップ教育への視座」の4つの視座を位置づけて分析した。第二に,開発的・実践的研究の動向では,「社会科授業研究への視座」を位置づけて掲載論文を分析した。第三に,実証的・経験的研究の動向では,「社会科教育史研究への視座」を位置づけて掲載論文を分析した。結論として,本稿で分析対象にした学会拡大期...

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Published in社会科研究 Vol. 100; pp. 37 - 48
Main Author 福田 喜彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 全国社会科教育学会 31.03.2024
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ISSN0289-856X
2432-9142
DOI10.20799/jerasskenkyu.100.0_37

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Summary:本稿では,学会拡大期の『社会科研究』の第61号から第70号までに掲載された論文をもとに,これらの論文が社会科教育研究にどのような視座をもたらしたのかを3つの類型による研究動向から明らかにした。第一に,規範的・原理的研究の動向では,「法教育研究への視座」「社会科評価研究への視座」「外国研究への視座」「シティズンシップ教育への視座」の4つの視座を位置づけて分析した。第二に,開発的・実践的研究の動向では,「社会科授業研究への視座」を位置づけて掲載論文を分析した。第三に,実証的・経験的研究の動向では,「社会科教育史研究への視座」を位置づけて掲載論文を分析した。結論として,本稿で分析対象にした学会拡大期の掲載論文は,社会科教育研究の高度化と細分化に寄与した論文であるといえる。第一に,社会科教育研究の高度化については,この時期の掲載論文は,博士論文の研究の基礎や発展につながるものが多く見られることである。教科教育学研究における大学院重点化の政策によって,社会科教育研究においても修士課程や博士課程での研究が充実した。それによって,社会科教育研究の学問的なアプローチもより洗練されたものになったのである。第二に,社会科教育研究の細分化については,法教育研究や社会科評価研究など今日において重視されている研究領域の先駆的な研究がこの時期に登場したことが挙げられる。こうした細分化された研究領域は,この後の社会科教育研究においての理論的な基盤を形成し,それぞれの学校種の実践的研究においても大きな影響を与えていくことになったのである。
ISSN:0289-856X
2432-9142
DOI:10.20799/jerasskenkyu.100.0_37