神経性食思不振症に対する理学療法の経験
【症例紹介】 23歳,女性,神経性食思不振症(AN)であり,長期間の徹底した食事制限と過剰運動が習慣化していた.意識朦朧となり当院精神科へ緊急搬送された.入院時,身長158 cm,体重27 kg,脱水著明であった.多臓器不全と敗血症性ショックを併発し,約1カ月間のICU管理を経てICUでの理学療法(PT)開始となった. 【理学療法評価及び経過】 初回PT時には,JCS 200,人工呼吸器管理,体重40 kg,Alb 2.0 g/dl,左室駆出率(EF)42%,両側無気肺,肺水腫を認めた.ベッドサイドPTを継続し,機能維持訓練,離床を進め,入院15週目からPT室訓練に移行した.この時点では,意...
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Published in | 関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 30; p. 64 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
2011
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Subjects | |
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ISSN | 0916-9946 2187-123X |
DOI | 10.14901/ptkanbloc.30.0.64.0 |
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Summary: | 【症例紹介】 23歳,女性,神経性食思不振症(AN)であり,長期間の徹底した食事制限と過剰運動が習慣化していた.意識朦朧となり当院精神科へ緊急搬送された.入院時,身長158 cm,体重27 kg,脱水著明であった.多臓器不全と敗血症性ショックを併発し,約1カ月間のICU管理を経てICUでの理学療法(PT)開始となった. 【理学療法評価及び経過】 初回PT時には,JCS 200,人工呼吸器管理,体重40 kg,Alb 2.0 g/dl,左室駆出率(EF)42%,両側無気肺,肺水腫を認めた.ベッドサイドPTを継続し,機能維持訓練,離床を進め,入院15週目からPT室訓練に移行した.この時点では,意識清明,体重29 kg,Alb 3.1 g/dl,CRP 1.0 mg/dl,筋力はMMT上肢4,下肢3であり,基本動作要介助,歩行不可であった.同時期に経口栄養摂取が開始され,退院まで約1900kcal/日摂取した.PT室訓練での運動強度は,食事摂取量や体重をモニタリングしつつ,Albが3.6 g/dl未満の時期は低負荷な運動として基本動作訓練を中心に行い,Alb改善後はレジスタンストレーニングを加えた.運動量は一貫して少量とし,エネルギー消費を抑えて体重改善を優先した.経過途中,体重増加に伴う肥満恐怖感,過剰活動再発の兆しが表れた為,筋力測定器を用いた膝伸展筋力改善(入院20週目5.9 kg→退院時11.8 kg),下腿周径値(入院20週目25.5cm→退院時29.5cm)による健常参考値との比較をフィードバックすることにより,肥満恐怖感,過剰活動を抑えた.入院29週目に体重41 kg,Alb 3.7 g/dl,EF 61%,ADL自立にて自宅退院した.退院時にはエネルギー消費量の算出方法を指導した.退院後は通院PTを継続し,定期的に身体計測を行い,運動量を調整した.退院後の過剰活動再燃はみられなかったが,食事摂取量低下による体重減少がすすみ,約5ヶ月後には,体重34 kgとなりPT中止,その後,体重30 kgとなり再入院となった. 【考察】 今回,極度の低栄養状態に陥ったAN患者に運動療法を施行した.本症例においては,栄養状態をモニタリングしつつ運動処方内容を変更した結果,体重改善と同時に身体機能改善が得られたと考える.肥満恐怖感に対しては,客観的な筋力改善をフィードバックし除脂肪体重改善を示したことにより,肥満恐怖感が軽減され,食事摂取量減少や過剰活動の予防に寄与したと考えた.AN患者における過剰活動の要因として,身体活動に伴うエネルギー消費への理解の欠如が考えられている.本症例に対しては,教育的な観点から退院時にエネルギー消費量の算出方法を指導し,退院後の過剰活動を防ぐことができたと考える.しかしながら,精神科をはじめとする多職種による包括的介入にも関わらず,退院直後からの体重減少,再入院という経過から,ANの根治の困難さが示された. |
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Bibliography: | O1-11-064 |
ISSN: | 0916-9946 2187-123X |
DOI: | 10.14901/ptkanbloc.30.0.64.0 |