アキレス腱断裂後の跛行改善を目的に考案した船底型装具の効果

【背景】アキレス腱断裂術後、踵上げ練習で機能回復が順調に進まない症例の経験や、運動機能不全の代表である跛行の改善不良により筋力回復が滞った経験から、我々は筋力、動作両面を解決する方法を模索している。そして過去行った足底圧による歩行分析で術後早期は立脚期の荷重移行が遅延することを報告し、跛行改善のためには荷重や重心の円滑な移動が重要と考えている。 【目的】アキレス腱断裂後の跛行改善を目的に考案した船底型装具の効果を明らかにすること。 【方法】対象は当院で3bundleのアキレス腱縫合術を施行した患者11名で、術後1週から機能的装具を装着し、6週で装具除去、荷重は術後3週までに全荷重とした。船底型...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 28; p. 19
Main Authors 鮫島, 康仁, 小黒, 賢二, 倉田, 勉, 佐藤, 陽介, 本所, 泰子, 矢内, 宏二, 小口, 敦, 松本, 徹, 笹原, 潤
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2009
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.28.0.19.0

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Summary:【背景】アキレス腱断裂術後、踵上げ練習で機能回復が順調に進まない症例の経験や、運動機能不全の代表である跛行の改善不良により筋力回復が滞った経験から、我々は筋力、動作両面を解決する方法を模索している。そして過去行った足底圧による歩行分析で術後早期は立脚期の荷重移行が遅延することを報告し、跛行改善のためには荷重や重心の円滑な移動が重要と考えている。 【目的】アキレス腱断裂後の跛行改善を目的に考案した船底型装具の効果を明らかにすること。 【方法】対象は当院で3bundleのアキレス腱縫合術を施行した患者11名で、術後1週から機能的装具を装着し、6週で装具除去、荷重は術後3週までに全荷重とした。船底型装具は従来の機能的装具上から着脱可能なもので、船底型装具を使用しない6名を従来群、使用した5名を船底群とした。使用頻度は術後3週から6週にかけて週3回程度の外来リハビリ時、装具装着下で自然な歩容を確認する程度である。歩行分析に足底圧分布測定装置Foot scan system(Nitta社製)を用い、歩行立脚期の踵と前足部の圧力転換期(以下、移行時間)を跛行程度の指標とした。重心移動評価は平衡機能測定装置バランスマスタ(NEUROCOM社製)を用い、両脚立位で一定方向に重心前後移動した際の方向制御(Directional Control;以下DC)を専用ソフトウェア上で算出した(速度3種類;低・中・速)。なお歩行・重心移動評価は術後2・3ヶ月に行った。加えて筋力回復の指標に術後の片脚踵上げ可能時期を記録した。片脚踵上げ可能の目安は床面から踵挙上5cm以上とし、条件はMMTに準じた。 【結果】移行時間(%)は術後2ヶ月;従来群80.2±8.8、船底群74.1±6.5、術後3ヶ月;従来群54.5±13.9、船底群56.8±13.1で両群に差を認めなかった。DC(%)は低・中・速の順に、術後2ヶ月;従来群63.5±10.2・71.7±12.8・70.5±17.5、船底装具群79.0±4.8・84.2±5.7・83.6±6.2、術後3ヶ月;従来群66.5±13.2・78.5±8.7・85.2±2.6、船底群82.8±1.1・83.2±8.0・89.2±3.0となり、船底群がより方向制御された重心移動を行っていた。片脚踵上げ可能時期は従来群93.2±24.4日、船底群68.0±15.6日で船底型装具の使用により、筋力回復は早まる結果となった。 【考察】従来と同様の術式、後療法でも比較的短時間の船底型装具の介入によって、より円滑な重心移動の獲得と筋力回復を順調に進めることが可能で、装具使用により筋活動の向上が期待でき、アキレス腱断裂後のリハビリに有用な装具と考えられた。しかし目的の跛行改善は足底圧上、装具の効果を認めず、重心移動を促すことによって期待できる筋活動以外に跛行改善の要因を検討すべきと考えられた。
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ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.28.0.19.0