パーキンソン病患者のADL自立度と身体機能の関係

【目的】近年、在宅高齢者の身体機能に関する研究は数多く報告されている。中でも、虚弱高齢者や骨折患者などの報告が多く、下肢筋力の低下がADL自立度と関係していることが指摘されている。そこで今回、パーキンソン病(以下PD)患者では、どの身体機能がADL自立度と関係しているのかを検討した。 【対象】当院に外来通院されているPD患者で、医師の許可と本研究に了解の得られた28名(平均年齢70.9歳±8.4歳)に対して評価を行った。Hoehn&Yahrの重症度分類では、ステージ1が2名、2が10名、3と4が8名ずつであった。 【方法】ADL能力の評価は、Functional Independence Me...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 26; p. 37
Main Authors 大日向, 真理子, 川田, 真司, 玉虫, 俊哉, 猪爪, 陽子, 玉井, 敦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2007
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.26.0.37.0

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Summary:【目的】近年、在宅高齢者の身体機能に関する研究は数多く報告されている。中でも、虚弱高齢者や骨折患者などの報告が多く、下肢筋力の低下がADL自立度と関係していることが指摘されている。そこで今回、パーキンソン病(以下PD)患者では、どの身体機能がADL自立度と関係しているのかを検討した。 【対象】当院に外来通院されているPD患者で、医師の許可と本研究に了解の得られた28名(平均年齢70.9歳±8.4歳)に対して評価を行った。Hoehn&Yahrの重症度分類では、ステージ1が2名、2が10名、3と4が8名ずつであった。 【方法】ADL能力の評価は、Functional Independence Measure(以下FIM)の運動項目を用いて、ADL自立群と非自立群に分類した。身体機能の評価は、握力、簡易筋力測定器(HOGGAN社製COMPUFET使用)で測定した膝伸展筋力と座位での体幹伸展筋力、30秒間の上体起こし回数、腹臥位からの背そらし、片脚立位の6項目を測定した。評価・測定は薬の影響を考慮して服薬1時間後に行った。統計学的処理はMann-Whitney検定を用い、危険率5%未満(P<0.05)を有意水準とした。 【結果】対象者のうちADL自立群14名、非自立群14名であった。これらを比較した結果、握力、膝伸展筋力、背反らし、片脚立位で有意差が認められ、体幹伸展筋力と上体起こしに有意差は認められなかった。また、下肢筋力と高い相関があるADL動作は清拭、更衣、トイレ、移乗動作であり、背そらしでは清拭、更衣、トイレ、階段動作、片脚立位では移乗、歩行、階段動作であった。 【考察】今回PD患者に対してADL自立度とどの身体機能が関係しているかを検討した。握力と下肢筋力、背反らし、片脚立位がADLの自立を左右していることが示唆された。握力は下肢筋力と高い相関を示す筋力指標であり、在宅高齢者同様、下肢筋力の維持がADLの維持に繋がると考える。片脚立位に関しては、姿勢反射障害による立位バランスの低下から、移乗や歩行などの立位を伴う動作に制限が生じるものと考える。しかし体幹伸展筋力に差が無いにも関わらず、非自立群では背反らしが困難となった。今回体幹伸展筋力は座位で測定したため、背反らしに要求される体幹伸展の可動性を伴った伸展筋力(体幹の抗重力伸展活動)とは異なっていたと考える。 一方、ADL動作の中でも清拭、更衣、トイレ動作がこれら身体機能と高い相関を示した。立位バランスの低下により動作が不安定となり、下肢筋力や体幹の抗重力伸展活動の低下により動作の遂行が困難になると推測する。加えて、これらの動作には体幹の回旋や伸展を伴った回旋要素が不可欠であり、複合的な体幹運動が求められている。 今後は下肢筋力の強化とバランス練習、それに体幹の抗重力伸展活動を積極的に行うことでADLの維持に努めるとともに、ADL動作要素の分析と体幹の複合的な運動についての関連性も追究していきたい。
Bibliography:37
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.26.0.37.0