関節不安定性を認めた左変形性膝関節症に対しTKAを施行した症例

【はじめに】 術前の関節症変化(以下OA変化)が少ないにも関わらず、関節不安定性と疼痛を主訴とし人工膝関節置換術(以下TKA)を施行した症例を経験したため以下に報告する。 【症例紹介】 75歳、女性、診断名:左変形性膝関節症、現病歴:2年前より左膝関節痛出現。手術:左TKA(Biomet mobile PSTypeを使用) 【術前評価】 画像所見;左FTA189°、Grade2 疼痛:歩行時・立ち上がり時に内側裂隙・腸脛靭帯部 整形外科的テスト:varus-t(+)、anterior drawer-t(+)、Lachman-t(+) ROM-t:屈曲145°、伸展10° MMT:大腿四頭筋4...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 28; p. 60
Main Authors 新谷, 益巳, 加藤, 啓祐, 宮本, 梓, 坂本, 直文, 三村, 聡男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2009
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.28.0.60.0

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Summary:【はじめに】 術前の関節症変化(以下OA変化)が少ないにも関わらず、関節不安定性と疼痛を主訴とし人工膝関節置換術(以下TKA)を施行した症例を経験したため以下に報告する。 【症例紹介】 75歳、女性、診断名:左変形性膝関節症、現病歴:2年前より左膝関節痛出現。手術:左TKA(Biomet mobile PSTypeを使用) 【術前評価】 画像所見;左FTA189°、Grade2 疼痛:歩行時・立ち上がり時に内側裂隙・腸脛靭帯部 整形外科的テスト:varus-t(+)、anterior drawer-t(+)、Lachman-t(+) ROM-t:屈曲145°、伸展10° MMT:大腿四頭筋4 JOA:左60点 歩行:初期~踵離地まで継続し膝内反、back kneeが増強するが、立脚中期にlateral thrustが著明。 【術後3W】 疼痛:最大屈曲時 整形外科的テスト:すべて(-) ROM-t:屈曲110°、伸展0° MMT:大腿四頭筋5 JOA:90点 歩行:術後1週:左立脚期を通じて膝屈曲は見られない。足底接地からknee-in著明。術後3週:踵接地~中期にかけてknee-inは軽度。 【プログラム・治療経過】 1)ROM-ex2)筋力強化3)歩行4)RICE5)DYJOC 術後3日:全荷重可・ROM-ex開始、術後7日:杖歩行訓練開始、33日:退院 【考察】 本症例は術前のX-pでのOA変化が軽度であり、膝関節不安定性を代償するために起こるとされている骨棘形成や後方関節包の拘縮を認めなかった。術前の歩行ではlateral thrust・back kneeが観察された。これらは靭帯機能不全によるものと考えられ、この症状が顕著に現れ疼痛の増悪に深く関与したと思われた。手術により、不安定性・アライメントは改善され歩行時のlateral thrust・back kneeは消失したが、術後から立脚期にknee-inを呈した。術前のlateral thrustは腸脛靭帯に依存した歩行パターンであり、大腿筋膜張筋のスパズムにより脛骨外旋を誘導されやすい状況であった。手術によるFTAの変化、大腿四頭筋内側広筋・関節包切開による筋出力・関節固有感覚の低下が加わり著明なknee-inを呈した歩行になったと考えられた。knee-inに対してDYJOCボードを用いて、膝関節軽度屈曲位で足部回内・下腿内旋・大腿外旋での荷重訓練を実施し、関節運動を誘導することで歩容の改善が図られた。
Bibliography:60
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.28.0.60.0