土器遺物の考古科学的研究
土器遺物の考古科学的研究の目的は文字の無い時代の歴史を読むことにあり,土器の生産・供給関係の再現は特に重要である.土器の産地推定法の開発にあたり,古代以前で最大の窯業生産物で,窯跡群が全国各地で調査されていた須恵器を主な研究対象とした.その蛍光X線スペクトルを比較した結果,K,Ca,Rb,Srの4元素が有効に地域差を示し,K-Ca,Rb-Srの両分布図で試料集団は窯跡群ごとにまとまることが判明した.日本列島の基盤を構成する花崗岩類も両分布図上で地域差を示し,須恵器の地域差は主成分鉱物である長石系因子で捉えることが可能であり,岩石学的にも説明可能であった.窯跡群出土須恵器の試料集団の相互識別に長...
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| Published in | 分析化学 Vol. 62; no. 2; pp. 73 - 87 |
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| Main Authors | , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
公益社団法人 日本分析化学会
2013
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| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0525-1931 |
| DOI | 10.2116/bunsekikagaku.62.73 |
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| Summary: | 土器遺物の考古科学的研究の目的は文字の無い時代の歴史を読むことにあり,土器の生産・供給関係の再現は特に重要である.土器の産地推定法の開発にあたり,古代以前で最大の窯業生産物で,窯跡群が全国各地で調査されていた須恵器を主な研究対象とした.その蛍光X線スペクトルを比較した結果,K,Ca,Rb,Srの4元素が有効に地域差を示し,K-Ca,Rb-Srの両分布図で試料集団は窯跡群ごとにまとまることが判明した.日本列島の基盤を構成する花崗岩類も両分布図上で地域差を示し,須恵器の地域差は主成分鉱物である長石系因子で捉えることが可能であり,岩石学的にも説明可能であった.窯跡群出土須恵器の試料集団の相互識別に長石系因子を主体とした2群間判別分析法を適用したところ,古墳時代最大の須恵器生産地の大阪府和泉陶邑製品が一方的に全国へ供給されたことが分かるなど,産地推定に有効であることを確認した.以上の方法は古墳出土埴輪の生産・供給問題の研究のほか,新しい時代の土器にも適用できる.これらの研究の結果,土器遺物の考古科学的研究に分析化学が不可欠であることが分かり,分析化学者が参加する新しい土器の考古学研究を提案した. |
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| ISSN: | 0525-1931 |
| DOI: | 10.2116/bunsekikagaku.62.73 |