弱高気圧酸素療法が術後炎症に及ぼす影響
【目的】 一般的に整形外科疾患における高気圧酸素療法は骨折、靭帯損傷などの外傷における治癒促進や炎症軽減などを期待して用いられる。ただし機器が高価であるため、多くの医療施設で使用されることは困難で、それに比べて弱高気圧酸素療法(以下mHBO)は汎用性が高い。しかしmHBOの科学的根拠は高気圧酸素療法に比べて乏しく、効果を明らかにすることは重要である。そこで我々は術後早期の炎症所見を経時的にみることで、mHBOの効果について検討を行ってきた。今回、mHBOの効果について新たな知見を得たので報告する。 【方法】 対象は2010年以前に当院で膝前十字靭帯再建術を施行した患者116名である。膝前十字靭...
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Published in | 関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 30; p. 23 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
2011
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0916-9946 2187-123X |
DOI | 10.14901/ptkanbloc.30.0.23.0 |
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Summary: | 【目的】 一般的に整形外科疾患における高気圧酸素療法は骨折、靭帯損傷などの外傷における治癒促進や炎症軽減などを期待して用いられる。ただし機器が高価であるため、多くの医療施設で使用されることは困難で、それに比べて弱高気圧酸素療法(以下mHBO)は汎用性が高い。しかしmHBOの科学的根拠は高気圧酸素療法に比べて乏しく、効果を明らかにすることは重要である。そこで我々は術後早期の炎症所見を経時的にみることで、mHBOの効果について検討を行ってきた。今回、mHBOの効果について新たな知見を得たので報告する。 【方法】 対象は2010年以前に当院で膝前十字靭帯再建術を施行した患者116名である。膝前十字靭帯再建術後、全ての患者に対しmHBOの実施を勧めるが、禁忌事項に当てはまる場合は除外している。術後プロトコルは、術後1週間ギプス固定後、硬性装具を装着し可及的に全荷重を許可している。対象分類は116名中、mHBO施行群(以下H群)、mHBO非施行群(以下N群)各58名とした。平均年齢はH群27.07歳、N群27.45歳、性別は両群とも男女比29:29であった。mHBOはAPTEC社製「酸素シャワーカプセル(AOC-720)」を用い、施行時間は30分間とし、H群の平均施行回数5.1回/7日であった。検討項目は、血液・生化学検査からCRPとWBC、加えて手術時間、受傷から手術までの待機期間とした。CRP、WBCはともに平均術後1日、7日目の計2回の検査結果を参照した。統計学的検討にはH群とN群の比較、各群術後1日と7日目の比較に差の検定を用いた。なお、血液・生化学検査は、術後通常診療で実施している結果を参照し、対象者の同意を得て使用している。またmHBO施行はすべて無償で行っている。 【結果】 CRPは術後1日目H群1.84mg/dl、N群2.04mg/dl、術後7日目H群0.72mg/dl、N群1.10mg/dlであった。WBCは術後1日目H群9271/μl、N群9210/μl、術後7日目H群6297/μl、N群6547/μlであった。両群ともCRP、WBCいずれも術後1日目から7日目にかけて有意に減少し、術後7日目のCRPはH群がN群に対して有意に低値を示した。手術時間はH群67.2分、N群70.0分、手術待機期間はH群350.6日、N群210.7日で両群間に有意差はなかった。 【考察】 高気圧酸素療法により足部体積の減少や自覚的評価の改善、また骨折、靭帯損傷の治癒促進の可能性を説いた報告は現在も続けられている。しかしmHBOは一般的な高気圧酸素療法とは医療機器として一線を画すため、その治療的根拠は不十分であるのが現状である。本研究では術後炎症時期におけるCRPに着目することで、mHBOの炎症軽減の可能性を認めたが、今後は術後成績や後療法に及ぼす影響を追加検討していく必要があると考えられた。 |
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Bibliography: | O1-4-023 |
ISSN: | 0916-9946 2187-123X |
DOI: | 10.14901/ptkanbloc.30.0.23.0 |