人工膝関節全置換術患者における股関節周囲筋筋力の変化とパフォーマンスとの関係
【目的】人工膝関節全置換術(以下TKA)を施行された患者は、ほぼ全例が術後2~4週において膝伸展筋力の回復が不十分にも関わらず、退院可能な歩行能力を獲得している。多くの理学療法士は経験的に、膝伸展筋力以外にも歩行に関与する筋として股関節や足関節の筋力を重視し、これらの筋力強化を実施している。しかし、TKA後の股関節周囲筋筋力が歩行能力にどのように影響しているのかという報告は少ない。そこで、本研究は股関節周囲筋に着目し、TKA前と退院時での筋力の変化と、筋力とパフォーマンスとの関連を明らかにすることを目的とした。 【方法】対象は、2006年8月から2007年8月までに当院でTKAを施行した変形性...
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| Published in | 関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 27; p. 23 |
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| Main Authors | , , , , , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
2008
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| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0916-9946 2187-123X |
| DOI | 10.14901/ptkanbloc.27.0.23.0 |
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| Summary: | 【目的】人工膝関節全置換術(以下TKA)を施行された患者は、ほぼ全例が術後2~4週において膝伸展筋力の回復が不十分にも関わらず、退院可能な歩行能力を獲得している。多くの理学療法士は経験的に、膝伸展筋力以外にも歩行に関与する筋として股関節や足関節の筋力を重視し、これらの筋力強化を実施している。しかし、TKA後の股関節周囲筋筋力が歩行能力にどのように影響しているのかという報告は少ない。そこで、本研究は股関節周囲筋に着目し、TKA前と退院時での筋力の変化と、筋力とパフォーマンスとの関連を明らかにすることを目的とした。 【方法】対象は、2006年8月から2007年8月までに当院でTKAを施行した変形性膝関節症患者18名(女性18名、平均年齢73.8±5.7歳)である。測定時期は、術前と退院時(術後平均32.7±5.5日)とした。筋力の測定にはアニマ社製等尺性筋力測定装置μTas MF-01を用い、股関節外転および伸展筋力、膝関節伸展筋力を測定した。パフォーマンス評価には10m歩行速度、Timed Up & Go Test(以下TUG)を採用した。術前から退院時まで、全例において股関節伸展および外転筋力、膝関節伸展筋力のトレーニングを継続した。荷重開始時期は術後平均14.2±4.3日であった。統計処理にはWilcoxonの符号付き順位検定とSpearmanの順位相関係数を用いた。なお、統計学的有意水準はp<0.05とした。 【結果】術前から退院時での変化は、非術側股関節伸展筋力で有意に改善し(0.19±0.06kg/kg v.s. 0.23±0.07kg/kg ;p<0.05)、術側膝関節伸展筋力では有意に低下していた(0.25±0.75kg/kg v.s. 0.22±0.05kg/kg ;p<0.05)。また、術前から退院時でのパフォーマンスの結果に有意差は認められなかった。 術前においては、股関節周囲筋力とパフォーマンスとの間に有意な相関は認められなかった。退院時では非術側股関節伸展筋力と10m快適歩行速度(r=0.50, p<0.05)、TUG(r=-0.47, p<0.05)との間で優位な相関が認められた。 【考察】TKA後患者において、股関節伸展筋力は非術側で退院時に有意に改善し、また、退院時の股関節伸展筋力とパフォーマンスとの有意な相関が認められた。このことから、退院時に膝伸展筋力の回復が不十分な状況下においても、術前と同等のパフォーマンスを得られている要因として股関節周囲筋筋力の関連が示唆された。股関節周囲筋筋力やパフォーマンスの長期的な経過報告はなく、これらの長期的な経過および相互の関連についても追跡調査していくことが今後の課題である。 |
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| Bibliography: | 14 |
| ISSN: | 0916-9946 2187-123X |
| DOI: | 10.14901/ptkanbloc.27.0.23.0 |