作業環境及び災害・事故時に利用可能な揮発性有機化合物の個人曝露評価手法

有機溶剤として産業で広く利用されている揮発性有機化合物(VOCs)の一部は, ヒトの健康への悪影響が報告されている。作業環境では,労働者が特定の化学物質を長期的に高濃度で曝露する危惧がある。また,災害・事故に伴う化学物質の漏洩,副生成などにより,周辺環境における作業者と住民の健康被害が起こることがある。作業環境または災害・事故現場などにおいて,個人の行動状況次第ではVOCs への曝露量に大きな影響があるため,迅速かつ簡易にVOCs の個人曝露量を把握することが重要である。動力が必要ない小型携帯捕集法である拡散型パッシブサンプラーは,定常状況または災害・事故等の非定常状況下においても容易に使用で...

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Published in地球環境 Vol. 28; no. 2; pp. 155 - 162
Main Authors 王, 斉, 雨谷, 敬史, 三宅, 祐一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国際環境研究協会 2023
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ISSN1342-226X
2758-3783
DOI10.57466/chikyukankyo.28.2_155

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Summary:有機溶剤として産業で広く利用されている揮発性有機化合物(VOCs)の一部は, ヒトの健康への悪影響が報告されている。作業環境では,労働者が特定の化学物質を長期的に高濃度で曝露する危惧がある。また,災害・事故に伴う化学物質の漏洩,副生成などにより,周辺環境における作業者と住民の健康被害が起こることがある。作業環境または災害・事故現場などにおいて,個人の行動状況次第ではVOCs への曝露量に大きな影響があるため,迅速かつ簡易にVOCs の個人曝露量を把握することが重要である。動力が必要ない小型携帯捕集法である拡散型パッシブサンプラーは,定常状況または災害・事故等の非定常状況下においても容易に使用できることが期待されている。しかし,パッシブサンプラーを用いたVOCs の個人曝露量測定には,物質ごとにサンプリングレート(SR)の算出が必要であり,実測値がある物質数は限られている。また,SR は環境要因に影響を受けることが知られている。本研究では,活性炭を吸着剤としたパッシブサンプラーの精度を評価し,幅広い物性を持つVOCs に適用できるSR の推算方法を検討した。まず,パッシブサンプラー性能試験国際標準(ISO 16107)の試験条件を満たすチャンバーを用い,異なる温度,湿度,風速及びガス濃度の条件下で,幅広い物性を持つ33 種類のVOCs に対するパッシブサンプラーの精度を評価し,その影響要因を検討した。石油由来の活性炭が充填されたパッシブサンプラーの場合,33 種類VOCs のSR 実測値の変動係数は1.6%–13%であり,いずれの条件においてもSR は大きな影響を受けないことが示唆され,良好な精度が示された。ISO 16107 に従って算出した精度の影響要因の寄与率は,標本間の変動(7.0%–94%)が最も高く,温度(0%–69%),湿度(0%–51%),風速(0%–46%)と濃度(0%–10%)による影響は比較的低かった。また,化学物質の分子構造からSR の推算方法を検討し,SR の推算値と実測値の比較により,SR 推算方法の有効性を評価した。
ISSN:1342-226X
2758-3783
DOI:10.57466/chikyukankyo.28.2_155