浸潤性膀胱癌の保存的手術に対するマイクロカプセル化学塞栓補助療法

浸潤性膀胱癌の根治療法は膀胱全摘術とされるが, 患者の perfommance status を考えれば膀胱保存手術が望ましい. そのためには術後再発を防止する有効な補助療法が必要である. このような観点から各種抗癌剤 (MMC, PEP, CDDP) マイクロカプセル化学塞栓療法の手術補助効果を検討した. 対象は化学塞栓療法後に膀胱保存手術をした, T2 6例, T3 9例の原発性膀胱癌15例 (MC群) である. これに対して, 初回治療が膀胱保存手術であったT2 12例, T3 2例の原発性膀胱癌14例を対照とした. 膀胱保存手術は対照群ではTUR12例, 膀胱部分切除術2例であり, M...

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Published in日本泌尿器科學會雑誌 Vol. 77; no. 3; pp. 474 - 481
Main Authors 玉川, 芳春, 加藤, 哲郎, 阿部, 良悦, 加藤, 敏郎, 佐藤, 一成, 森, 久, 守山, 正胤
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本泌尿器科学会 1986
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ISSN0021-5287
1884-7110
DOI10.5980/jpnjurol1928.77.3_474

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Summary:浸潤性膀胱癌の根治療法は膀胱全摘術とされるが, 患者の perfommance status を考えれば膀胱保存手術が望ましい. そのためには術後再発を防止する有効な補助療法が必要である. このような観点から各種抗癌剤 (MMC, PEP, CDDP) マイクロカプセル化学塞栓療法の手術補助効果を検討した. 対象は化学塞栓療法後に膀胱保存手術をした, T2 6例, T3 9例の原発性膀胱癌15例 (MC群) である. これに対して, 初回治療が膀胱保存手術であったT2 12例, T3 2例の原発性膀胱癌14例を対照とした. 膀胱保存手術は対照群ではTUR12例, 膀胱部分切除術2例であり, MC群ではTUR12例, 膀胱部分切除術3例であった. 化学塞栓療法後に50%以上の腫瘍縮小が, 測定可能14例中11例にみられた. MC群ではT3 9例中8例にTURを施行したが, この8例は化学塞栓療法による腫瘍縮小効果が大きく, 手術時の切除標本の病理学的検索にてpT2以下への down staging が認められ, TURで tumor free となったものであった. 観察期間は7~112ヵ月であるが, 再発率は対照群では1年64.3%, 3年81.0%であるのに対して, MC群では1年35.4%, 3年35.4%であった. また, 生存率は対照群では1年77.1%, 3年66.1%であるが, MC群では死亡例はまだない. 両群の再発率と生存率の差は, いずれも推計学的に有意であった (p<0.05: Cox-Mantel test). 以上の結果は本療法が, down staging によって浸潤性膀胱癌に対して膀胱保存手術を可能とし, 再発防止効果ならびに延命効果があることを示唆すると考える.
ISSN:0021-5287
1884-7110
DOI:10.5980/jpnjurol1928.77.3_474