熱侵害刺激により惹起された炎症反応へのサブスタンスPの関与

19世紀後半, Goltz1)およびStricker2)らにより, 坐骨神経あるいは後根刺激が血管拡張を伴う炎症反応を惹き起こすことが見出された. Bayliss3)は, この炎症反応が交感神経系を介するものではなく, 求心性神経の逆行性興奮によって惹き起こされる可能性を明らかにした. この神経性炎症様反応は, capsaicin(一次細径求心性線維を比較的特異的に変性させる化学物質)感受性神経の刺激によってのみ特異的に生じることより4), 刺激に伴い一次細径求心性線維末端から血管拡張を惹き起こす物質が遊離される可能性が示唆された. そして, この現象に関与する物質としてhistamine(H...

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Published in炎症 Vol. 7; no. 5; pp. 425 - 430
Main Authors 今井, 康夫, 渋谷, 徹, 猪木, 令三, 松浦, 英夫, 米原, 典史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本炎症・再生医学会 01.09.1987
日本炎症学会
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ISSN0389-4290
1884-4006
DOI10.2492/jsir1981.7.425

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Summary:19世紀後半, Goltz1)およびStricker2)らにより, 坐骨神経あるいは後根刺激が血管拡張を伴う炎症反応を惹き起こすことが見出された. Bayliss3)は, この炎症反応が交感神経系を介するものではなく, 求心性神経の逆行性興奮によって惹き起こされる可能性を明らかにした. この神経性炎症様反応は, capsaicin(一次細径求心性線維を比較的特異的に変性させる化学物質)感受性神経の刺激によってのみ特異的に生じることより4), 刺激に伴い一次細径求心性線維末端から血管拡張を惹き起こす物質が遊離される可能性が示唆された. そして, この現象に関与する物質としてhistamine(Hist), kinins, ATPなどの炎症chemical mediatorが提唱されてきた. 1953年, Lembeck5)によりsubstance P(SP)が一次求心性線維の伝達物質であるとの仮説が提出されて以来, SPの神経性炎症様反応への関与が注目されはじめ, 1975年Hokfeltらは6), 免疫組織化学的手法を用い, SPが一次求心性線維中枢端のみならず, 末梢端にも存在し, 特に皮膚では毛細血管周囲に分布していることを明らかにした. 加えて合成SPの動脈内投与により, 濃度に依存した血管透過性の亢進が生じることが明らかにされた7).
ISSN:0389-4290
1884-4006
DOI:10.2492/jsir1981.7.425