当院回復期リハビリテーション病棟における重症脳血管患者の転帰と特徴

【はじめに】 回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)では,生活の場における実践的な日常生活動作(以下,ADL)能力の獲得を主体としている.しかし,ADL能力向上のみが必ずしも自宅退院につながるものではなく,家族背景や家屋構造,社会的背景、病態などさまざまな因子が転帰先の決定に影響する.今回,当院回復期リハ病棟から自宅退院が可能であった重症脳血管患者の,どのような要因が自宅退院に影響しているのかを検討したので報告する.なお,本研究での重症脳血管患者は日常生活機能点10点以上のものと規定した. 【対 象】 2008年9月~2011年1月に回復期リハ病棟を退院した脳血管患者のうち入院時...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 31; p. 235
Main Authors 寺村, 誠治, 永橋, 愛, 宮城, 新吾
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2012
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.31.0_235

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Summary:【はじめに】 回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)では,生活の場における実践的な日常生活動作(以下,ADL)能力の獲得を主体としている.しかし,ADL能力向上のみが必ずしも自宅退院につながるものではなく,家族背景や家屋構造,社会的背景、病態などさまざまな因子が転帰先の決定に影響する.今回,当院回復期リハ病棟から自宅退院が可能であった重症脳血管患者の,どのような要因が自宅退院に影響しているのかを検討したので報告する.なお,本研究での重症脳血管患者は日常生活機能点10点以上のものと規定した. 【対 象】 2008年9月~2011年1月に回復期リハ病棟を退院した脳血管患者のうち入院時の日常生活機能評価点が10点以上の患者56名(男性35名 女性21名,平均年齢76.1±13.1). 【方 法】 調査項目は年齢,性別,在院日数,成人同居家族数,入院時・退院時FIM,入院時・退院時日常生活機能評価点とし,カルテより後向き調査をした.統計処理ソフトはPASW18を使用,転帰先を目的変数とし多重ロジスティック回帰分析を実施した(p<0.05). 【倫理的配慮】 評価内容はカルテ転記とし,個人が特定できる情報は削除,個人の特定は全く不可能としている. 【結 果】 転帰先内訳は自宅37名(66.0%),転所19名(33.9%)であった.退院時FIMの運動項目合計(オッズ比0.938)と成人同居家族数(オッズ比0.210)との有意な関連が認められた. 【考 察】 澤田や鈴木らは,自宅退院に与える影響としてFIM得点が高いことや,同居家族数が多いことが挙げられると報告している.当院回復期リハ病棟においても同様の傾向が示されたが,FIM得点においては認知項目の合計に有意な関連は認められなかった.理解力や精神機能の変化がADL動作を阻害するといわれているが,家族の協力度や,環境面への働きかけで解決できた問題も多いと考えられる. 今後は,家族の協力度や家屋構造,FIM下位項目別の分析を合わせて行い,予後予測および転帰先決定への影響を明らかにしていきたい.
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ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.31.0_235