高等学校における観光教育カリキュラムの比較分析
本研究は,高等学校の観光教育のカリキュラムの枠組みを検討するために,各校のカリキュラムと教育内容を調査,分析するものである.同時に,既存研究と比較分析することで,その枠組みの変化を考察した.高等学校の観光教育は,学習指導要領に規定がなく,現存の教科・科目の枠組みや担当教員達の専門性と教員免許の影響を強く受ける.2003年の新学習指導要領の改訂と近年のさまざまな教育改革は,観光教育にも強く影響を及ぼし,特色ある教育として,観光教育の可能性を広げるとともに,カリキュラムの枠組みに質的な変化をもたらしている.従来の観光教育は,職業教育を志向していたことに対し,近年は,住民視点から地域を考えるきっかけ...
Saved in:
| Published in | 観光ホスピタリティ教育 Vol. 3; pp. 16 - 33 |
|---|---|
| Main Author | |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
日本観光ホスピタリティ教育学会
31.07.2008
|
| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 1880-3059 2433-2828 |
| DOI | 10.24535/jsthe.3.0_16 |
Cover
| Summary: | 本研究は,高等学校の観光教育のカリキュラムの枠組みを検討するために,各校のカリキュラムと教育内容を調査,分析するものである.同時に,既存研究と比較分析することで,その枠組みの変化を考察した.高等学校の観光教育は,学習指導要領に規定がなく,現存の教科・科目の枠組みや担当教員達の専門性と教員免許の影響を強く受ける.2003年の新学習指導要領の改訂と近年のさまざまな教育改革は,観光教育にも強く影響を及ぼし,特色ある教育として,観光教育の可能性を広げるとともに,カリキュラムの枠組みに質的な変化をもたらしている.従来の観光教育は,職業教育を志向していたことに対し,近年は,住民視点から地域を考えるきっかけとして観光教育に取り組む例が増加している.結果として,「基礎・応用・実践」という体系に基づく職業教育のカリキュラムに加え,観光現象の一分野に注目し,生徒個人が選択科目として観光を学ぶカリキュラム編成も見られるようになっている.これに伴い,外部からの専門講師招聘やインターンシップの実施は減少している.また,地理歴史科や公民科など社会科の教員が観光を担当する例も増え,観光教育の新たな方向性がうかがえる.一方で,本研究並びに宍戸(2006)によれば,教育委員会や新たに観光教育に取り組む教員達の多くは,依然として観光を「物見遊山」と捉え,観光教育は観光産業への人材育成を行うための職業教育であると考える傾向が強い.以上から,観光教育導入後から現在までの趨勢を十分認識した上で,カリキュラムの多様化に鑑み,高校だけでなく,大学や地域社会を巻き込んで議論を進めていく必要がある. |
|---|---|
| ISSN: | 1880-3059 2433-2828 |
| DOI: | 10.24535/jsthe.3.0_16 |