足関節底屈筋力測定の妥当性と再現性の検討
【目的】 足関節底屈運動には様々な筋が関与するため、筋力測定で個々の筋力を区別することは困難である。福永らが明らかにした下腿筋群の生理学的横断面積(以下PCSA)から、腓腹筋を除いた底屈筋群の割合は75.9%と推定される。しかし先行研究による膝伸展位に対する屈曲位の底屈筋力の割合は80-90%と過大に評価され、正確な測定がされているとは言い難い。本研究の目的は底屈筋力の測定肢位を工夫することで正確な測定結果を得ること、加えて測定自体に再現性があるか検討することである。 【方法】 対象は健常成人28名56足(男女各14名、平均年齢28.5歳)とした。底屈筋力はCon-Trex(CMV-AG社製)...
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Published in | 関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 31; p. 220 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
2012
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Subjects | |
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ISSN | 0916-9946 2187-123X |
DOI | 10.14901/ptkanbloc.31.0_220 |
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Summary: | 【目的】 足関節底屈運動には様々な筋が関与するため、筋力測定で個々の筋力を区別することは困難である。福永らが明らかにした下腿筋群の生理学的横断面積(以下PCSA)から、腓腹筋を除いた底屈筋群の割合は75.9%と推定される。しかし先行研究による膝伸展位に対する屈曲位の底屈筋力の割合は80-90%と過大に評価され、正確な測定がされているとは言い難い。本研究の目的は底屈筋力の測定肢位を工夫することで正確な測定結果を得ること、加えて測定自体に再現性があるか検討することである。 【方法】 対象は健常成人28名56足(男女各14名、平均年齢28.5歳)とした。底屈筋力はCon-Trex(CMV-AG社製)で測定した。測定肢位は膝関節完全伸展位を腹臥位で、膝関節90°屈曲位を膝立ち位に設定し、各々の肢位で最大等尺性筋力、等速性筋力を測定した。等尺性筋力から伸展位に対する屈曲位の最大筋力比を、等速性筋力(30、90、180deg/sec)から最大筋力比、最大筋力発揮角度を求め検討した。また測定再現性の検討には対象者10名に対し、膝屈曲位における最大等尺性筋力を1週間以上の間隔をあけ、2回測定した。肢位間の差の検討には対応のあるt検定を、測定再現性の検討には級内相関係数を用いた。本研究は対象者に研究趣旨を十分に説明したうえ、同意を得て行った。 【結果】 最大筋力比(等尺性、30、90、180deg/sec)は73.6、86.2、91.5、98.9%となり、180deg/secを除く条件で両肢位間に有意差を認めた。最大底屈筋力発揮角度(30、90、180deg/sec)は伸展位で背屈3.1±3.8°、2.2±5.3°、8.1±4.4°、屈曲位で背屈5.2±3.0°、6.9±3.9°、11.0±1.5°となり、全ての角速度で肢位間に有意差を認めた。再現性の検討においては級内相関係数が0.87であった。 【考察】 2肢位の測定から求めた等尺性の最大筋力比は、福永らの報告したPCSAから得られた腓腹筋を除いた底屈筋群の割合に近似した。本研究は先行研究よりも最大筋力発揮時に伴いやすい代償動作を最小限にできる肢位であったと考えられた。測定再現性についても良好な結果を得られた。また角速度が高速となるほど単関節筋の貢献は高く、単関節筋が主となる肢位で筋出力はより背屈位へ移行した。この結果から底屈筋群における二関節筋、単関節筋の役割相違が窺え、ヒラメ筋など単関節筋の運動関与を今後、明らかにする必要があると考えられた。本測定結果はスポーツ障害を有する者の評価・治療に今後、役立てていく予定である。 |
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Bibliography: | 220 |
ISSN: | 0916-9946 2187-123X |
DOI: | 10.14901/ptkanbloc.31.0_220 |