腰部脊柱管狭窄症患者における歩行持久力に影響を及ぼす因子の検討
【目的】 腰部脊柱管狭窄症(LCS)患者の日常生活活動範囲は、間欠性跛行による歩行持久力の低下によって大きく制限されている。この主な原因は、一般的にしびれや下肢痛といった神経学的症状の増強であると報告されている。しかし、LCS患者の歩行持久力には、神経学的症状のみならず運動機能が大きく影響を及ぼしている可能性がある。そこで、本研究ではLCS患者の運動機能および神経学的症状を評価し、歩行持久力に影響を及ぼす因子について検討した。 【方法】 対象は、2008年10月~2011年10月の間に、当院に入院して理学療法を行ったLCS患者32例(男性20例、女性12例、年齢67±12 歳、身長163±11...
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Published in | 関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 31; p. 193 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
2012
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Subjects | |
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ISSN | 0916-9946 2187-123X |
DOI | 10.14901/ptkanbloc.31.0_193 |
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Summary: | 【目的】 腰部脊柱管狭窄症(LCS)患者の日常生活活動範囲は、間欠性跛行による歩行持久力の低下によって大きく制限されている。この主な原因は、一般的にしびれや下肢痛といった神経学的症状の増強であると報告されている。しかし、LCS患者の歩行持久力には、神経学的症状のみならず運動機能が大きく影響を及ぼしている可能性がある。そこで、本研究ではLCS患者の運動機能および神経学的症状を評価し、歩行持久力に影響を及ぼす因子について検討した。 【方法】 対象は、2008年10月~2011年10月の間に、当院に入院して理学療法を行ったLCS患者32例(男性20例、女性12例、年齢67±12 歳、身長163±11 cm、体重 60±10 kg)とした。除外基準は、LCS以外の原因による歩行障害を有する者とし、評価時期は入院時とした。評価項目について、歩行持久力の評価は6分間歩行距離(6MWD)とした。運動機能は、等尺性膝伸展筋力、腹部引き込み検査による腹横筋収縮圧の変化量、10m歩行速度、バランス機能としてFunctional reach test(FRT)とTime up & Go test(TUGT)を測定した。また、神経学的症状はしびれと下肢痛の程度をVisual analog scaleを用いてそれぞれ評価した。統計学的解析は、6MWDと各評価項目の関連性をPearsonの積率相関係数を用いて行った後、6MWDを従属変数、有意な相関関係を認めた因子を独立変数とした重回帰分析を行った。倫理的配慮について、当院の倫理規定に従って研究活動申請書を提出し、対象には研究内容を十分に説明して書面にて同意を得た。 【結果】 6MWDと有意な相関関係を認めた因子は、等尺性膝伸展筋力(r=0.354、p=0.047)、10m歩行速度(r=0.600、p<0.001)、FRT(r=0.663、p<0.001)、TUGT(r=-0.605、p=0.001)およびしびれ(r=-0.428、p=0.014)であった。その他の評価項目は、6MWDとの有意な関連性を認めなかった。その後の重回帰分析では、TUGTおよびしびれが6MWDの規定因子として抽出された(r=0.783、調整済みR2=0.582、p<0.001)。 【考察】 本研究の結果から、LCS患者の歩行持久力には従来報告されている、しびれの他に、バランス機能が大きく影響を及ぼしていることが考えられた。このことから、LCS患者では運動機能の中でも、特にバランス機能が低下することで、日常生活活動範囲が制限されている可能性が考えられた。LCS患者における歩行持久力を効果的に改善させるためには、しびれの軽減のみならずバランス機能の改善に対する介入が必要と考えられた。 【まとめ】 LCS患者の歩行持久力は、バランス機能およびしびれによって大きく影響を受けていると考えられた。 |
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Bibliography: | 193 |
ISSN: | 0916-9946 2187-123X |
DOI: | 10.14901/ptkanbloc.31.0_193 |