脳卒中片麻痺患者に対する軟性装具の有用性について

【目的】脳卒中片麻痺患者の歩行で治療あるいは補助手段として多くの装具が使用されている。今回、軟性装具アルケア社製foot up brace(以下FUB)の効果について痙縮の客観的指標を用い検討したので報告する。 【対象】本研究に同意を得た当院の入院・外来片麻痺患者10名(男性5名、女性5名、平均年齢67.9±7.1歳)を対象とした。原因疾患は脳梗塞6名、脳出血3名、脳膿瘍1名、下肢Brunnstrom stageは3が2名、4が2名、5が6名であった。 【方法】全対象者に対し痙縮評価と歩行評価を行った。痙縮評価はModified Ashworth Scale(以下MAS)を用い足関節底屈筋群を...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 27; p. 8
Main Authors 古賀, 良生, 浜辺, 政晴, 飯田, 晋, 縄田, 厚, 渡辺, 博史, 助川, 智之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2008
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.27.0.8.0

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Summary:【目的】脳卒中片麻痺患者の歩行で治療あるいは補助手段として多くの装具が使用されている。今回、軟性装具アルケア社製foot up brace(以下FUB)の効果について痙縮の客観的指標を用い検討したので報告する。 【対象】本研究に同意を得た当院の入院・外来片麻痺患者10名(男性5名、女性5名、平均年齢67.9±7.1歳)を対象とした。原因疾患は脳梗塞6名、脳出血3名、脳膿瘍1名、下肢Brunnstrom stageは3が2名、4が2名、5が6名であった。 【方法】全対象者に対し痙縮評価と歩行評価を行った。痙縮評価はModified Ashworth Scale(以下MAS)を用い足関節底屈筋群を対象とした。測定肢位は辻らの方法に準じ、膝30°屈曲位とし、すべての測定は同一の検者が行った。歩行評価は10m歩行のビデオ撮影による解析を、解析ソフトDIPP-Motion(ディテクト社製)を使用して行った。歩行速度、歩行率を測定し、また接床・立脚中期・離床・遊脚中期の4つの局面での膝、足関節角度を検討した。そして、歩行速度、歩行率、各解析角度について裸足時とFUB装着時の比較をした。統計処理はWilcoxonの符号付順位和検定を行い有意水準は5%とした。 【結果】MASの結果、0:3名、1:3名、1+:4名、2以上:0名であった。歩行評価の結果で、歩行速度は裸足時よりもFUB装着時の方が有意に速かった(p<0.05)。歩行率でも裸足時よりもFUB装着時の方が有意に大きかった(p<0.01)。特にMAS1・1+であった者の変化量が大きい傾向であった。また、性差は認めなかった。歩行解析の結果では足先離床の局面の足関節の角度のみ差を認め、FUB装着時の方が有意な減少を示した(p<0.05)。 【考察】我々は先行研究でFUBの効果について痙縮の強くない患者に適応としている。今回、その適応を痙縮評価の一つであるMASを用いて検討した結果、同様の効果を得た。FUBの有用性をMASを用い客観的に評価することができた。FUBの効果は性差を認めなかったことから個別因子による影響は少ないものと思われた。歩行解析の結果からFUB装着により立脚後期での足関節背屈の温存がなされていることで、遊脚期へ移行しやすくなっているものと考えられた。今後、このFUBの効果の長期的検討や、MASで2以上に分布する痙縮の強い対象者についても効果があるのか検証する必要がある。
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ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.27.0.8.0