努力接地からみた浮き趾の抽出
【はじめに】 立位時,足趾が床に接していない「浮き趾」は,多くの報告において30%以上存在し,足趾把持力やバランス能力の低下が指摘されている。しかし我々の研究では足趾把持や重心前方移動といった努力接地により,浮き趾とされる例の半数以上で改善が認められている。今回、努力接地により浮き趾が改善する群(擬浮き趾群)と改善しない群(浮き趾群)について足趾把持力を計測した結果,これまでの浮き趾抽出に対する知見を得たので報告する。 【方法】 健常成人160名(平均年齢21.8±2.9歳)を対象とした。T大学倫理審査委員会の承認を得た上で,対象者には研究内容を説明し同意を得た。被検者を自作のPedoscop...
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Published in | 関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 31; p. 219 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
2012
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Subjects | |
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ISSN | 0916-9946 2187-123X |
DOI | 10.14901/ptkanbloc.31.0_219 |
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Summary: | 【はじめに】 立位時,足趾が床に接していない「浮き趾」は,多くの報告において30%以上存在し,足趾把持力やバランス能力の低下が指摘されている。しかし我々の研究では足趾把持や重心前方移動といった努力接地により,浮き趾とされる例の半数以上で改善が認められている。今回、努力接地により浮き趾が改善する群(擬浮き趾群)と改善しない群(浮き趾群)について足趾把持力を計測した結果,これまでの浮き趾抽出に対する知見を得たので報告する。 【方法】 健常成人160名(平均年齢21.8±2.9歳)を対象とした。T大学倫理審査委員会の承認を得た上で,対象者には研究内容を説明し同意を得た。被検者を自作のPedoscope上に5cm開脚位,開眼で起立させ,安静時,足趾で床を把持した状態,身体を前方に移動し静止した状態の足底画像を撮影した。画像から10本の足趾に対し,完全に接地しているものを2点,不完全接地を1点,無接地を0点とする20点満点の浮き趾スコアを求めた。さらに安静時浮き趾スコア18点以上を「正常群」,17点から11点を「不完全接地群」,安静時浮き趾スコア10点以下で把持,前方移動時いずれかが18点以上のものを「擬浮き趾群」,把持,前方位移動いずれも17点以下のものを「浮き趾群」としその割合を求めた。次に足趾把持力計(竹井工業社製)を用い足趾把持力を計測,体重で除して正規化した。得られたデータから群間ごとの足趾把持力を一元配置の分散分析およびTurkeyの多重比較検定を用い比較検討した。 【結果】 正常群,不完全接地群,擬浮き趾群,浮き趾群の割合はそれぞれ,34.4%,30.0%,21.2%,14.4%であった。足趾把持力は,正常群に比べ擬浮き趾群(p<0.05),浮き趾群(p<0.01)で有意に低下していた。また擬浮き趾群に比べ浮き趾群(p<0.05)で有意に低下していた。 【考察】 これまでは安静時浮き趾スコア10点以下のもの,つまり擬浮き趾群,浮き趾群を総称して浮き趾としており,その割合は36.5%と先行研究の30%にほぼ一致している。しかしその中には把持や前方移動といった努力接地により改善が可能な「擬浮き趾群」が半数以上存在している。このケースは浮き趾群に比べ足趾把持力も大きいことから,歩行時に足趾まで体重移動が可能であることが推察される。これまでは安静時に足趾が接地していない例を「浮き趾」としていたが,今後は分けて身体機能を検討する必要がある。しかし言い換えれば,擬浮き趾群は浮き趾群に移行する可能性も秘めており,アプローチの検討も重要と思われる。 【まとめ】 擬浮き趾群は浮き趾群に比べ足趾把持力が大きいことから,別々に足趾機能を検討しなければならない。 |
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Bibliography: | 219 |
ISSN: | 0916-9946 2187-123X |
DOI: | 10.14901/ptkanbloc.31.0_219 |