高齢者における浴槽またぎ動作周期

【目的】 高齢者等の入浴動作において,浴槽の出入りは困難な動作である。本稿は,身体に障がいのない高齢者(以下,健常高齢者)および膝に疾患のある高齢者(以下,膝痛高齢者)が浴室洗い場から湯水のある浴槽に入り,同浴槽から洗い場に出るという一連の入浴動作をビデオで撮影して,立位姿勢で浴室洗い場から浴槽をまたぐ動作を分析し,またぎ動作周期を確認することを目的とした。  【方法】 実験協力者は参加の同意を得られた健常高齢者5名(男性2名,女性3名),膝痛高齢者4名(男性3名,女性1名)で,平均年齢70.3歳(65-86歳)であった。実験セットは愛知県常滑市にある(株)LIXIL水まわり総合技術研究所の一...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 31; p. 270
Main Author 加島, 守
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2012
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.31.0_270

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Summary:【目的】 高齢者等の入浴動作において,浴槽の出入りは困難な動作である。本稿は,身体に障がいのない高齢者(以下,健常高齢者)および膝に疾患のある高齢者(以下,膝痛高齢者)が浴室洗い場から湯水のある浴槽に入り,同浴槽から洗い場に出るという一連の入浴動作をビデオで撮影して,立位姿勢で浴室洗い場から浴槽をまたぐ動作を分析し,またぎ動作周期を確認することを目的とした。  【方法】 実験協力者は参加の同意を得られた健常高齢者5名(男性2名,女性3名),膝痛高齢者4名(男性3名,女性1名)で,平均年齢70.3歳(65-86歳)であった。実験セットは愛知県常滑市にある(株)LIXIL水まわり総合技術研究所の一隅に設置したユニットバス(浴槽は縦160cm,横68cm,深さ50cm,フランジ高さ39.6cm)を使用した。撮影は上部カメラ,横方向カメラ,後部方向カメラを用いて動作を記録した。 【説明と同意】 実験は事前に実験協力者に対して、内容について十分に説明を行い、書面で同意を得て実施した。 【結果】  浴槽をまたぐときは,足底が床面から離れ,膝及び足底が浴槽フランジを通過し,浴槽床面に着地する。この動作を,先に挙上した下肢を前脚,後に挙上した足を後脚とし一連の動作を概観すると,前脚は足指を床から挙上し始め(遊脚相初期),フランジを足部が通過するときが最も下肢を挙上した姿勢になり,足指から床面に着地する直前(遊脚相終期),そして足指が着地した瞬間である立脚相初期(足尖接地)に分けられた。次に後脚が洗い場から挙上開始した遊脚相初期に前脚は足底全体が接地(足底接地)し,後脚が最も挙上したとき,すなわちフランジを足部が通過するときが前脚の立脚中期になり,後脚を浴槽内に着地させたときが両足支持期となり,これらは実験協力者すべてに見られる動作であった。 【考察】  浴槽またぎ動作を周期的に捉えてみた場合,入るときの遊脚相~立脚相,出る時の遊脚相~立脚相をさらに細分化することができ,バランスをとるのに不安定な片足を挙上しているときは,遊脚初期・遊脚中期・遊脚終期となる。また歩行周期と異なり特徴的だったのは,浴槽に入るときも浴槽から出る時も立脚相初期が足尖接地であった。浴室環境から考えると,洗い場と浴槽床面との高低差が生じること,また階段と異なり,フランジの厚みにより歩幅を広くしなければならないため,足尖接地が見られたと考えられる。 【まとめ】  またぎ周期を細分化し,高低差と広い歩幅そして下肢拳上のための筋力やバランス能力を必要とする浴槽またぎ動作のどの周期で危険性が高いかを確認することにより,手すり設置等住宅改修の提案につなげることができると考える。
Bibliography:270
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.31.0_270