国立公園における沿岸生態系の気候変動影響と適応策
沿岸域にみられる生物群集・生態系は高い生態系サービスを有することが知られている。その中でも造礁サンゴから構成されるサンゴ群集やサンゴ礁は亜熱帯域から温帯域にかけての日本の多くの国立公園の資質のひとつとなっている。優れた自然景観や生物・生態系を有する国立公園においては利用と保全の両立が課題であるが,資質の劣化が生じるような場合には適切な保全策もしくは適応策を検討することが重要である。サンゴは水温上昇の影響を強く受ける生物群集のひとつであり,温暖化等の気候変動の影響を予測し,その影響を軽減できるような対策(適応策)の検討が不可欠である。本研究では,亜熱帯域に位置する慶良間諸島国立公園及び奄美群島国...
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Published in | 地球環境 Vol. 28; no. 1; pp. 95 - 102 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 国際環境研究協会
2023
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Subjects | |
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ISSN | 1342-226X 2758-3783 |
DOI | 10.57466/chikyukankyo.28.1_95 |
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Summary: | 沿岸域にみられる生物群集・生態系は高い生態系サービスを有することが知られている。その中でも造礁サンゴから構成されるサンゴ群集やサンゴ礁は亜熱帯域から温帯域にかけての日本の多くの国立公園の資質のひとつとなっている。優れた自然景観や生物・生態系を有する国立公園においては利用と保全の両立が課題であるが,資質の劣化が生じるような場合には適切な保全策もしくは適応策を検討することが重要である。サンゴは水温上昇の影響を強く受ける生物群集のひとつであり,温暖化等の気候変動の影響を予測し,その影響を軽減できるような対策(適応策)の検討が不可欠である。本研究では,亜熱帯域に位置する慶良間諸島国立公園及び奄美群島国立公園,温帯域に位置する足摺宇和海国立公園とその周辺域を対象に,水温上昇等の気候変動影響を評価し,地域ごとの適応策を検討することを目的とした。慶良間諸島においては空間解像度 100 m の水温のデータセット,奄美群島と足摺宇和海においては解像度約 2 km のデータセットを用いて将来の水温上昇の影響を評価した。また,慶良間諸島と奄美群島では優先的に保全すべき海域を特定するとともに,足摺宇和海では生物相の変化を受けて利用や管理の観点でどのような適応策を推進すべきかを検討した。気候変動の影響もしくは影響の受けやすさは地域間だけでなく地域内によっても大きく異なるため,地域ごとの個別の予測評価を積み重ねていくことが重要である。 |
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ISSN: | 1342-226X 2758-3783 |
DOI: | 10.57466/chikyukankyo.28.1_95 |