将来気候における日本の大豆と水稲の収量変化の比較

大豆はイネの転作作物としての栽培が普及している作物であるが,将来における最適な農地利用のためには,それぞれの作物について気候変動下において作物の生産性がどう変化するのかについて議論することが重要である。これまでの研究で,イネについては,日本全国を対象とした収量変化率の将来予測は存在したが,大豆については存在しなかった。本研究では,将来の気候変動が農作物に与える影響を評価するために,大豆とイネを対象として,過去の作物統計データと気象データをもとに統計モデルを作成し,収量と気象要因の関係を分析するとともに,統計モデルを将来シナリオに当てはめ,将来における収量の変化率を予測した。その結果,イネは高温...

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Published in地球環境 Vol. 28; no. 1; pp. 59 - 68
Main Authors 岡部, 憲和, 櫻井, 玄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国際環境研究協会 2023
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ISSN1342-226X
2758-3783
DOI10.57466/chikyukankyo.28.1_59

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Summary:大豆はイネの転作作物としての栽培が普及している作物であるが,将来における最適な農地利用のためには,それぞれの作物について気候変動下において作物の生産性がどう変化するのかについて議論することが重要である。これまでの研究で,イネについては,日本全国を対象とした収量変化率の将来予測は存在したが,大豆については存在しなかった。本研究では,将来の気候変動が農作物に与える影響を評価するために,大豆とイネを対象として,過去の作物統計データと気象データをもとに統計モデルを作成し,収量と気象要因の関係を分析するとともに,統計モデルを将来シナリオに当てはめ,将来における収量の変化率を予測した。その結果,イネは高温に対する耐性が強く,比較的高温でも収量を維持できる一方で,大豆は高温になると収量が減少する傾向がみられた。RCP2.6–SSP1 のシナリオの下での予測では,大豆もイネも数%の増収が見込まれたが,RCP8.5–SSP5 のシナリオの下での予測では,イネでは増収が見込まれる地域が多くみられた一方で,大豆は多くの地域で減収が予測された。ただし,全球気候モデルによって予測は異なり,日射量の予測に左右されることがわかった。
ISSN:1342-226X
2758-3783
DOI:10.57466/chikyukankyo.28.1_59