食道扁平上皮癌におけるKLF4発現に関する臨床病理学的検討

Kruppel-like factor 4(KLF4)は腸管や皮膚をはじめとする生体内のさまざまな組織で発現する転写因子であり,癌においては,細胞周期の抑制という点から癌抑制遺伝子として,アポトーシスの抑制という点から癌遺伝子として働く二面性が知られている.今回,食道扁平上皮癌の病理組織検体を用いて,KLF4の発現とその組織学的悪性度との関係性について検討した.昭和大学病院において食道扁平上皮癌と診断された患者に対し,外科的に切除された88症例を対象とした.切除検体を用いてKLF4とp53の免疫染色を行い,その発現率と臨床病理学的特徴(腫瘍径,分化度,深達度,リンパ管・静脈侵襲,リンパ節転移の...

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Published in昭和学士会雑誌 Vol. 81; no. 4; pp. 355 - 362
Main Authors 南雲, 佑, 三浦, 咲子, 本間, まゆみ, 塩沢, 英輔, 村上, 雅彦, 北島, 徹也, 瀧本, 雅文, 楯, 玄秀, 矢持, 淑子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 2021
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ISSN2187-719X
2188-529X
DOI10.14930/jshowaunivsoc.81.355

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Summary:Kruppel-like factor 4(KLF4)は腸管や皮膚をはじめとする生体内のさまざまな組織で発現する転写因子であり,癌においては,細胞周期の抑制という点から癌抑制遺伝子として,アポトーシスの抑制という点から癌遺伝子として働く二面性が知られている.今回,食道扁平上皮癌の病理組織検体を用いて,KLF4の発現とその組織学的悪性度との関係性について検討した.昭和大学病院において食道扁平上皮癌と診断された患者に対し,外科的に切除された88症例を対象とした.切除検体を用いてKLF4とp53の免疫染色を行い,その発現率と臨床病理学的特徴(腫瘍径,分化度,深達度,リンパ管・静脈侵襲,リンパ節転移の有無,進行度)について比較した.食道扁平上皮癌組織でのKLF4の発現率は51.1%(45/88)であり,正常食道粘膜組織での発現率88.6%(78/88)と比較すると,その発現率は低い傾向にあった.また,浸潤癌やリンパ節転移症例では,有意差をもってKLF4の発現率の低下がみられた(P<0.05).一方で,食道扁平上皮癌組織でのp53の発現率は82.9%(73/88)であったが,臨床病理学的特徴との有意な相関関係はみられなかった.今回の検討では,食道扁平上皮癌におけるKLF4の発現と悪性度との間に相関がみられた.即ち,進行した食道扁平上皮癌組織では有意にKLF4発現量が低下しており,食道においては,KLF4の癌抑制因子としての側面が見いだされた.
ISSN:2187-719X
2188-529X
DOI:10.14930/jshowaunivsoc.81.355