不整脈への効果

本項では心房細動(AF)と心室頻拍(VT)へのAutoSVまたはCPAP治療の効果についてレビューする. 睡眠時無呼吸(SAS)患者においてAFの合併率・新規発症率はSASを認めない患者と比べて高いことが知られている.SASによる低酸素血症・高炭酸ガス血症等が交感神経活性を亢進させ,血圧上昇・左室後負荷の増大から左房の拡大・線維化につながりAFを惹起するという病態生理が考えられている.SAS患者に対してCPAP治療を行うことで,電気的除細動後もしくはカテーテルアブレーション治療後のAF再発を抑制することができる.CPAP治療によるAF抑制効果については多数のエビデンスがあり,2016年の欧州心...

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Published inShinzo Vol. 49; no. 10; p. 1096
Main Author 成瀬, 代士久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.10.2017
Japan Heart Foundation
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.49.1096

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Summary:本項では心房細動(AF)と心室頻拍(VT)へのAutoSVまたはCPAP治療の効果についてレビューする. 睡眠時無呼吸(SAS)患者においてAFの合併率・新規発症率はSASを認めない患者と比べて高いことが知られている.SASによる低酸素血症・高炭酸ガス血症等が交感神経活性を亢進させ,血圧上昇・左室後負荷の増大から左房の拡大・線維化につながりAFを惹起するという病態生理が考えられている.SAS患者に対してCPAP治療を行うことで,電気的除細動後もしくはカテーテルアブレーション治療後のAF再発を抑制することができる.CPAP治療によるAF抑制効果については多数のエビデンスがあり,2016年の欧州心臓病学会のガイドラインでも「AF再発を減らすためにSASの治療は最適化されるべきである(Class ・a [evidence level B])」と明記されている.AutoSVのAFへの効果については,オフポンプ冠動脈バイパス術後(第1~5病日)に通常の心臓リハビリに加えてAutoSVを使用することで術後のAF発生を減らすことができたという報告がある. VTについてもAFと同様にSASを有する患者でVTの合併率・発生率(突然死,植え込み型除細動器[ICD]の適切作動)が増える.またSASを有する患者のICD作動は日中より夜間に多いことも知られている.SASを治療することにより心室性期外収縮が減るという報告は多数認められる.一方,VTに対する効果についての報告は,肥大型心筋症,心不全,重症SASを合併した薬物抵抗性VTにCPAPが奏功した症例報告や,中枢性SASを合併しICDが植え込まれた心不全患者にAutoSVを導入すると導入しなかった群に比べてその後のICD作動をSASがない患者と同じくらいまで減らすことができたという研究が認められる程度であり,今後のさらなるエビデンスの蓄積を期待したい.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.49.1096