激しい溶血をみとめたClostridium perfringens敗血症の1症例

【はじめに】溶血検体にはしばしば遭遇する.その多くは採血手技によるものだが,極稀に血管内溶血している場合がある.今回我々は溶血検体の対応を改めて考えさせられた,激しい溶血と球状赤血球症を伴ったClostridium perfringens(以下C. perfringens)敗血症の1例を経験したので報告する.【症例】68歳,女性 主訴:意識混濁,四肢脱力,全身冷感 既往歴:高脂血症,脂肪肝 現病歴:前日より腹痛,下痢,嘔吐があり近医を受診.脳梗塞を疑われ当院脳外科に緊急紹介された.来院時検査所見:血液検査WBC18900 RBC215万 Hgb7.5,PLT24.5万 血液塗抹標本にて,好中球...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 59; p. 408
Main Authors 貝原, 加苗江, 三舛, 正志, 吉田, 研一, 水野, 誠士, 霜津, 宏典, 山下, 美香, 荒瀬, 美幸, 後藤, 千帆, 森下, 未来依
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2010
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.59.0.408.0

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Summary:【はじめに】溶血検体にはしばしば遭遇する.その多くは採血手技によるものだが,極稀に血管内溶血している場合がある.今回我々は溶血検体の対応を改めて考えさせられた,激しい溶血と球状赤血球症を伴ったClostridium perfringens(以下C. perfringens)敗血症の1例を経験したので報告する.【症例】68歳,女性 主訴:意識混濁,四肢脱力,全身冷感 既往歴:高脂血症,脂肪肝 現病歴:前日より腹痛,下痢,嘔吐があり近医を受診.脳梗塞を疑われ当院脳外科に緊急紹介された.来院時検査所見:血液検査WBC18900 RBC215万 Hgb7.5,PLT24.5万 血液塗抹標本にて,好中球空胞形成,球状赤血球,大型桿菌貪食像を認めた.生化学検査:上清は暗赤色,溶血3+ TP 5.6,T-Bil 4.8,GOT 491,GPT 119,LDH 4451,K 5.4 尿検査:外観 暗赤色濁 細菌検査:血液培養好気+,嫌気+,ガス産生3+,C. perfringensが検出された.【経過】ICU入室後呼吸困難,興奮が強くなり人工呼吸管理開始.全身CTを撮影する直前に心停止に至り永眠された.ご家族より病理解剖の承認が得られず死因の確定はできなかったが,C. perfringensによる重症腸炎から尿毒症,溶血,敗血症が進行し,多臓器不全に陥ったものと推測された.【考察】通常,溶血検体は採り直しを依頼しているが,本症例では再採血検体も変わらず著しい溶血が認められたため採血手技による溶血は否定された.自動血液測定装置は好中球増加と球状赤血球の増加が示唆され,検体外観の著しい溶血を考慮すると病的血管内溶血も疑うことが可能であった.病的血管内溶血の原因として薬剤,異型輸血,免疫性,熱傷,感染症等が考えられるが,なかでも急速に進行し著しい溶血と球状赤血球症を伴うC. perfringens敗血症の報告が近年されている.C.perfringensは土壌および腸管・泌尿生殖器系の常在菌であるが,極稀に何らかの原因で激烈な進行性のガス壊疽や溶血をおこす感染症と言われている.本症例の経験に学び,血液検査を発端にC. perfringens敗血症を疑うことができれば,より迅速に治療を開始できる可能性があると考えられた.
Bibliography:P2-E4-5
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.59.0.408.0