健康寿命の阻害要因に関するコホート研究

【はじめに】 わが国の2006年における平均寿命は男性が79歳、女性が85.81歳に達し、高齢化が急速に進んでいる。高齢化の進行に伴い、認知症や寝たきりなど高齢者の介護が大きな課題になり、ただ単なる長生きではなく、健康で長生きする健康寿命の延伸が求められている。そこで、本研究では基本健康診査受診者を対象にして健康寿命の延伸を図るために、健康寿命の阻害要因を前向きコホート研究により明らかにすることをその目的とした。 【対象と方法】 対象はC町の住民で1996~1999年の基本健康診査を受診し、1998年に実施した生活習慣の調査に回答した2,577人(男873人、女1,704人)である。エンドポイ...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 57; p. 242
Main Authors 百瀬, 義人, 谷原, 真一, 今任, 拓也, 畝, 博, 板並, 智子, 渡辺, 美野子, 瓜生, 洋子, 馬場園, 明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2008
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.57.0.242.0

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Summary:【はじめに】 わが国の2006年における平均寿命は男性が79歳、女性が85.81歳に達し、高齢化が急速に進んでいる。高齢化の進行に伴い、認知症や寝たきりなど高齢者の介護が大きな課題になり、ただ単なる長生きではなく、健康で長生きする健康寿命の延伸が求められている。そこで、本研究では基本健康診査受診者を対象にして健康寿命の延伸を図るために、健康寿命の阻害要因を前向きコホート研究により明らかにすることをその目的とした。 【対象と方法】 対象はC町の住民で1996~1999年の基本健康診査を受診し、1998年に実施した生活習慣の調査に回答した2,577人(男873人、女1,704人)である。エンドポイントは要介護度4以上あるいは死亡とした。観察期間は2001年4月から2007年3月の6年間である。検討した項目は、年齢、喫煙、飲酒、血圧値、Body Mass Index(BMI)、血糖値、総コレステロール値、貧血の有無などである。統計解析は、要介護度4以上あるいは死亡のリスク要因について比例ハザードモデルにより検討した。有意水準はp<0.05とした。 【結果】 観察期間中に、男性では死亡が146人、要介護4以上が34人、女では死亡が119人、要介護4以上が51人に認められた。死亡のリスクの男女比はほぼ2:1、要介護4以上のそれはほぼ1:1であった。男性ではBMI20未満の者や貧血の者のリスクが有意に高かった。喫煙は総死亡に対するリスク要因であった。しかし、要介護4以上を加えると、ハザード比は1.32と高かったが、有意ではなくなった。女性では、BMI20未満の者、貧血の者、総コレステロール値200mg/dl未満の者、血糖値100mg/dl以上の者のリスクが有意に高かった。これらの結果から、老化により体重が減少したり、貧血になったり、コレステロール値が低下したりすることが健康寿命の阻害要因と考えられた。高血圧症の者のハザード比は男が1.05、女が1.11であり、リスクの上昇を認めなかった。C町では高血圧予防活動を強力に推し進めており、対象者の中で血圧値が160mmHgを超える者はいなかった。
Bibliography:2F195
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.57.0.242.0