脊椎椎体無腐性壊死に対する経皮的椎体形成術の経験

【目的】骨粗鬆症性椎体骨折は日常診療上よく遭遇する疾患であるが、一般的に安静臥床あるいは外固定等の保存療法によって良好な治療成績を獲得できる。一方、椎体骨折後に骨癒合が得られず無腐性壊死を生じた場合、本病態は保存療法に抵抗性であり、治療に難渋することが少なくない。近年、経皮的椎体形成術(percutaneous vertebroplasty,以下PVP)が高齢者の骨粗鬆性脊椎椎体骨折に応用され、低侵襲性で速やかに除痛が得られる等の利点が報告されている。今回、骨粗鬆性椎体骨折後無腐性壊死病変に対して行なったPVPの有効性とその問題点を検討した。 【対象、方法】2003年9月より2005年2月まで...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 54; p. 251
Main Authors 奥田, 晃章, 大田, 政史, 藤本, 吉範, 金沢, 敏勝, 重光, 陽一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2005
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.54.0.251.0

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Summary:【目的】骨粗鬆症性椎体骨折は日常診療上よく遭遇する疾患であるが、一般的に安静臥床あるいは外固定等の保存療法によって良好な治療成績を獲得できる。一方、椎体骨折後に骨癒合が得られず無腐性壊死を生じた場合、本病態は保存療法に抵抗性であり、治療に難渋することが少なくない。近年、経皮的椎体形成術(percutaneous vertebroplasty,以下PVP)が高齢者の骨粗鬆性脊椎椎体骨折に応用され、低侵襲性で速やかに除痛が得られる等の利点が報告されている。今回、骨粗鬆性椎体骨折後無腐性壊死病変に対して行なったPVPの有効性とその問題点を検討した。 【対象、方法】2003年9月より2005年2月までの間に、当科でPVPを施行した骨粗鬆性脊椎骨折56症例(男性15例,女性41例)を対象とした。手術時年齢は63から91歳(平均77歳)、追跡調査期間は2か月から1年6か月(平均10.5か月)であった。Th8からL5椎体にPVPを施行し、1椎体にPVPを行った症例は42例、2椎体は11例、3椎体は3例、計73椎体にPVPを行なった。椎体圧迫骨折に伴う遅発性脊髄麻痺を5例に認め、Frankel分類はCが4例、Dが1例であった。術前検査として腰椎骨塩定量、脊椎X線動態撮影、reconstruction CT、ダイナミック造影MRIを行なった。PVP手技は全麻下に腹臥位として、14G骨生検針を両側椎弓根から刺入して、椎体造影を行なった後に、polymethylmethacrylate(以下PMMA)骨セメントを椎体内に注入し、翌日から歩行を許可し、術後3日目に退院とした。患者自身に腰痛をVisual Analog Scale(以下VAS)を用いて10段階で評価させ、術前と術後で比較した。 術後に脊椎単純X線およびreconstruction CTを撮影し、骨セメントの漏出の有無などを確認し、術後成績との関連を検討した。 【結果】使用したPMMA量は,0.5から12ml(平均3.1ml)であった。術前のVASは8から10(平均9.4)から、術後0から8(平均1.7)と有意に改善した。最終経過観察時のVASは、0が20例、3以下が33例、4以上が3例であった。遅発性脊髄麻痺がみられた5例は、術後Frankel分類Cが1例、Dが3例、Eが1例となり、1段階改善が4例、不変が1例であった。術後、軽微な外傷にて隣接椎体に圧迫骨折が生じたのは、12例13椎体であった。骨折が発症した時期は術後3日目から7か月の間であり、5例が術後10日以内であった。PMMA骨セメントが椎体外に漏出した症例を13例に認めたが、脊柱管にPMMA骨セメントが漏出した症例は無かった。9例に椎間板内への漏出を認めたが、隣接椎体の骨折を認めなかった。 【考察】PVPは脊椎椎体無腐性壊死に対して速やかに十分な除痛が得られ有効な治療法と考えられた。遅発性脊髄麻痺の症例では麻痺の改善が見られる症例が存在した。一方、隣接椎体の圧迫骨折が約21%に生じ、PVPの問題点と思われた。PMMA骨セメントの漏出による、合併症は見られなかった。
Bibliography:2H06
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.54.0.251.0