急性心不全に対するNPPV の効果

急性心不全患者に対するNPPV(Non-invasive Positive Pressure Ventilation:非侵襲的陽圧換気)の血行動態への効果は静脈灌流量の低下による前負荷軽減と,心臓周囲圧の上昇による後負荷の減少が知られている.またNPPVは肺胞拡張,機能的残気量の増加による酸素化改善と,肺コンプライアンス改善による呼吸筋仕事量の低下をもたらし,交感神経活性を低下させる. 数々の臨床試験の結果,急性心不全に対するNPPVの使用は気管挿管の回避と院内死亡率の抑制に有意に関連することが知られている.欧米の最新心不全ガイドラインにおいても,急性期NPPVの使用はClass ・Aで推奨さ...

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Published inShinzo Vol. 49; no. 10; p. 1094
Main Authors 安斉, 俊久, 永井, 利幸, 中野, 宏己
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.10.2017
Japan Heart Foundation
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.49.1094

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Summary:急性心不全患者に対するNPPV(Non-invasive Positive Pressure Ventilation:非侵襲的陽圧換気)の血行動態への効果は静脈灌流量の低下による前負荷軽減と,心臓周囲圧の上昇による後負荷の減少が知られている.またNPPVは肺胞拡張,機能的残気量の増加による酸素化改善と,肺コンプライアンス改善による呼吸筋仕事量の低下をもたらし,交感神経活性を低下させる. 数々の臨床試験の結果,急性心不全に対するNPPVの使用は気管挿管の回避と院内死亡率の抑制に有意に関連することが知られている.欧米の最新心不全ガイドラインにおいても,急性期NPPVの使用はClass ・Aで推奨されている.なかでも,初回接触時に呼吸回数が25回/分以上でSpO2が90%以下の強い呼吸困難を伴う症例においては,より早期のNPPV導入が望ましいとされている.モード選択に関しては,原則CPAP(Continuous Positive Airway Pressure:持続気道陽圧)で十分な効果が期待できるとされているが,COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:慢性閉塞性肺疾患)に代表されるような高二酸化炭素血症を伴う2型呼吸不全や,呼吸筋疲労を伴っている場合はBiPAP(Bilevel Positive Airway Pressure:二層性気道陽圧)を選択する.当院では原則トータルフェイスマスクを用い,CPAPモードを第一選択としており,実際約9割の急性心不全症例に使用されている. NPPVの導入に成功しても,日常診療の中では患者ごとの忍容性や病態の違いなどから,適切な離脱タイミングや離脱失敗に悩むことも少なからず経験するものの,離脱に関する報告は極めて少ない.当院の急性心不全レジストリ(NaDEF:National cerebral and cardiovascular center Acute Decompensated heart Failure)の解析結果(617例)では,NPPV装着後24時間以内に61%が離脱に成功した一方で,33%が使用継続,6%が気管内挿管へと移行していた.24時間以内離脱困難の予測因子を検討したところ,入院時の収縮期血圧低値,CRP高値そして下腿浮腫の存在が独立して関連していた.また,離脱困難症例では強心薬や利尿薬の使用が有意に多く,硝酸薬の使用は少なかった.したがって,Nohria-Stevenson分類のWet & Coldの症例や肺炎などの感染症合併例におけるNPPV離脱困難が示唆された.また,NPPV奏功の指標として,SAP ・ score,NPPV装着後のpHの変化や酸素化の改善などが報告されており,当院のレジストリ研究でもより詳細な検討を行ってゆく予定である.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.49.1094