麻痺側足関節捻挫により歩行能力が低下した維持期脳卒中患者に対するアプローチ -短下肢装具の使用と歩行トレーニングが有用であった1例
【はじめに】 麻痺側足関節捻挫により歩行能力が低下した維持期脳卒中患者に対して,短下肢装具(AFO)の使用と歩行トレーニングが有用であり歩行能力の改善が認められた.これに関連した報告は非常に少なく,考察を加えてここに報告する. 【方法】 症例は64歳男性.診断名:右視床出血(H21.7発症).H23.3時点の評価は10m快適歩行速度(10mgait):43m/min,timed”up&go”test(TUG):16secであった.H23.5自宅で足を捻り麻痺側足関節捻挫を受傷.約2週間リハビリを休んだ.リハビリ再開後は歩容の乱れが目立ち,プレスイング(PSw)からイニシャルスイング(I...
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Published in | 関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 31; p. 15 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
2012
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Subjects | |
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ISSN | 0916-9946 2187-123X |
DOI | 10.14901/ptkanbloc.31.0_15 |
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Summary: | 【はじめに】 麻痺側足関節捻挫により歩行能力が低下した維持期脳卒中患者に対して,短下肢装具(AFO)の使用と歩行トレーニングが有用であり歩行能力の改善が認められた.これに関連した報告は非常に少なく,考察を加えてここに報告する. 【方法】 症例は64歳男性.診断名:右視床出血(H21.7発症).H23.3時点の評価は10m快適歩行速度(10mgait):43m/min,timed”up&go”test(TUG):16secであった.H23.5自宅で足を捻り麻痺側足関節捻挫を受傷.約2週間リハビリを休んだ.リハビリ再開後は歩容の乱れが目立ち,プレスイング(PSw)からイニシャルスイング(ISw)への移行がスムーズではなく3動作の歩行パターンとなり,ターミナルスイング(TSw)からイニシャルコンタクト(IC)への移行もスムーズではなく前足部からの接地で場所も一定ではなかった.H23.10歩容の乱れが続き10mgait:21m/min,TUG:21secと歩行能力の低下が認められた.これに対し,足関節の底屈制限と側方安定性の付加を目的にオルトップAFOを使用し,前方へのステップ練習など歩行周期を部分的に抽出した自重による歩行トレーニングを週2回実施した.なお,対象者およびその家族より研究上の目的と作業内容についての了解を得て,インフォームドコンセントの形成に至ったものとみた. 【結果】 H24.1に再評価を行い,AFO使用にて10mgait:44m/min,TUG:15secと改善を認めた.さらにAFO不使用でも10mgait:40m/min,TUG15secと改善を認めた. 【考察】 歩行の改善をPerryがロッカーファンクションと呼ぶ動きに着目して考察する.AFOを使用して麻痺側ステップ練習を行うことで,ICの場所のばらつきが減少しTSwからスムーズに移行することが可能となった.しかし,踵接地が得られずヒールロッカーの機能を得ることはできなかった.非麻痺側のステップ練習を行うことで麻痺側単脚支持期の支持性向上が図れたと考えられる.このときAFO上部のマジックテープを緩めることで麻痺側足関節背屈が得られ,アンクルロッカーとフォアフットロッカーの機能を得ることができターミナルスタンス(TSt)からPSw,ISwへの移行がスムーズになったと考えられる.この結果,前方への重心移動速度が向上し歩行速度が改善したと考えられる.さらにAFOを外してもこの効果が持続しており,AFOを使用しての歩行トレーニングにより歩行パターンの再構築が得られたと考えられる. 【まとめ】 低下した歩行能力に対してAFOの使用と自重による歩行トレーニングがロッカーファンクションの獲得につながりその向上を認めた.歩行能力の向上を目的とした理学療法を考える上での一助となると考えられる. |
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Bibliography: | 15 |
ISSN: | 0916-9946 2187-123X |
DOI: | 10.14901/ptkanbloc.31.0_15 |