家族に焦点をあてたカリキュラム作成

<緒言>看護は、患者(療養者を含む)の家族と密接な関係にある。片田らの研究においても、よいケアができたとエキスパートナースたちが感じるひとつの判断基準に、家族へもケアができた時だとある。これは看護師たちが、家族の存在を気にかけて家族の為に何かしたいと考えている現われであるといえる。しかし、病院の在院日数は短縮化され在宅への橋渡しが必要であるにも関わらず、患者は重症化し、患者を支える資源として家族を捉えることはできても、家族を看護の対象として捉えることは非常に困難であると予測できる。看護基礎教育においても看護の対象は患者と家族であると言いながらも、実際には臨地実習で受け持つ短期間に患者家族の看護...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 55; p. 223
Main Author 三輪, ひとみ
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2006
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.55.0.223.0

Cover

More Information
Summary:<緒言>看護は、患者(療養者を含む)の家族と密接な関係にある。片田らの研究においても、よいケアができたとエキスパートナースたちが感じるひとつの判断基準に、家族へもケアができた時だとある。これは看護師たちが、家族の存在を気にかけて家族の為に何かしたいと考えている現われであるといえる。しかし、病院の在院日数は短縮化され在宅への橋渡しが必要であるにも関わらず、患者は重症化し、患者を支える資源として家族を捉えることはできても、家族を看護の対象として捉えることは非常に困難であると予測できる。看護基礎教育においても看護の対象は患者と家族であると言いながらも、実際には臨地実習で受け持つ短期間に患者家族の看護を展開することは難しい。そこで、間近に行われる看護基礎教育のカリキュラム改正において、家族看護を効果的に組み入れられるように今回のカリキュラム作成に取り組んだ。 <方法>1.文献より、家族の概念を明確にし、家族看護に必要な内容を抽出した。抽出した内容を看護基礎教育の各専門分野で教授しやすいように分類し、共通する内容ごとにカテゴリー化した。2.学生、教員、臨地実習指導者のインタビューを行った。学生は、1年生5名、3年生5名の各グループで座談会形式により家族看護をどのように考えているか自由に語った。教員、臨地実習指導者は、家族看護について学生がどのような学びをしているか、また学生に何を学んで欲しいか、個人インタビューをした。さらに教員は、講義の中でどのように教授しているか語った。インタビュー結果からカリキュラムへの活用方法を明確化した。3.上記をもとに専門分野の目標と在宅看護論の学習方法を設定した。 <結果>文献は、患者あるいは在宅療養者の状況と家族の関係性の視点から6つに分類した。(1)自宅で暮らす療養者とその家族、(2)退院に向かう障害を持つ患者とその家族、(3)精神障害患者とその家族、(4)終末期にある患者とその家族、(5)急性期にある患者とその家族、(6)患児とその家族である。この6つの対象別に家族の理解と家族の看護の内容をまとめた。学生のインタビューでは、臨地実習を通して家族をどのように捉えたかと、看護として、ねぎらいの声かけ、そばにいる、安らぎの時を提供するなどが語られた。また、自己体験との置き換えや既習学習との比較、家族からのフィードバック、ロールモデル、家族の一途さや必死さからの刺激により学生の感性が揺さぶられ学習行動につながっていた。教員や臨地実習指導者のインタビューでは、家族の情報はとれているが、看護としてはそばにいて話を聞くことが精一杯の状況であり、看護として家族の話が聴けていないことが語られた。以上をふまえ、専門分野の科目目標に家族看護に関する目標を設定した。目標設定は、文献から抽出した内容を表現できるようにした。(例:成人看護学:終末期にある患者と家族の関係を理解し、家族の感情を十分表現でき、気持ちに折り合いがつけられる看護支援を理解する)さらに在宅看護論は、インタビューで語られた学生の学習行動を参考に学習方法を設定した。講義形式に偏らず、フィールドワーク調査、ロールプレイング、グループワークを取り入れた。 <今後の課題>今回は、家族看護に焦点をあてたカリキュラムであったが、カリキュラム改正に向けては、現状をふまえ看護基礎教育で教授すべき内容を抽出し目標や方法を設定していく必要がある。
Bibliography:2D05
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.55.0.223.0