成長期腰椎分離症患者のバランス機能について-姿勢安定度評価指標を用いた検討

【目的】  腰椎分離症の発生機序に関する報告はみられるが,身体機能に関する報告は少ない.慢性腰痛者に対し重心動揺測定を行った報告では,慢性腰痛群に動的バランス能力の低下がみられるとされている.そこで,本研究では成長期の腰椎分離症者のバランス機能特性を明らかにすることを目的とした. 【方法】  対象は,腰椎分離症を有し,外来理学療法施行期間が2ヶ月未満である中学生4名(以下;分離群),現在腰椎・下肢に障害がなく,既往も有さない中学生4名(以下;Con群)とした.重心動揺測定にはMedicaputures製のWin-podを用いた.測定肢位は両脚立位とし,両上肢を前方で組ませ,両踵中央部を10cm...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 31; p. 64
Main Authors 坂本, 雅昭, 粕山, 達也, 西, 恒亮, 小保方, 祐貴
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2012
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.31.0_64

Cover

More Information
Summary:【目的】  腰椎分離症の発生機序に関する報告はみられるが,身体機能に関する報告は少ない.慢性腰痛者に対し重心動揺測定を行った報告では,慢性腰痛群に動的バランス能力の低下がみられるとされている.そこで,本研究では成長期の腰椎分離症者のバランス機能特性を明らかにすることを目的とした. 【方法】  対象は,腰椎分離症を有し,外来理学療法施行期間が2ヶ月未満である中学生4名(以下;分離群),現在腰椎・下肢に障害がなく,既往も有さない中学生4名(以下;Con群)とした.重心動揺測定にはMedicaputures製のWin-podを用いた.測定肢位は両脚立位とし,両上肢を前方で組ませ,両踵中央部を10cm離した状態とした.重心動揺測定は,まず静的バランスを静止立位にて測定し,次に動的バランスを望月らの姿勢安定度評価指標(Index of Postural Stability;以下IPS)にて,足底が浮かずに,安定して姿勢保持が可能な範囲で重心を支持基底面内中央保持,前方移動,後方移動,右方移動,左方移動してもらい,初期の身体動揺が収束した後,測定した.測定箇所につき,測定時間10秒,試行回数3回とし,測定間の休憩は30秒間とした.また,測定中に足底が浮いた場合,体幹が大きく動揺した場合,その測定は無効とした.これらの測定から総軌跡長,外周面積,重心動揺面積,安定域面積,IPSを算出した.統計処理にはSPSS ver.17.0 for Windowsを使用し,各指標の関連についてMann-WhitneyのU検定を用いた.有意水準は5%未満とした.本研究は,対象者,保護者に目的及び内容,対象者の有する権利について口頭にて十分な説明を行い,参加の同意を書面にて得た上で実施した. 【結果】  対象者の基本属性の群間に有意差はみられなかった.各指標による比較では重心動揺面積,IPSの群間に有意な差が認められた(p<0.05).その他の指標には有意差は認められなかった. 【考察】  重心動揺面積とIPSについて有意差が認められ,静止立位の総軌跡長と外周面積では有意差は認められなかった.これより分離群では動的バランス能力が低下していることが示唆された.しかし,本研究の結果である動的バランスの低下が,腰椎分離症の発生機序因子であるかは明らかになっていない.諸家により,腰痛患者は姿勢保持のための姿勢戦略が変化することが報告されている.今後は,腰椎分離症の発生機序における動的バランスの影響を明らかにするため,動的バランス時の姿勢戦略について検討していくことが課題と考える.
Bibliography:64
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.31.0_64