穿刺吸引細胞診にてアポクリン化生を示し診断に苦慮した乳腺腫瘍2症例の再検討
【はじめに】近年、画像診断の進歩により、乳腺が細胞診検査の対象となる機会が増加してきている。当院においても乳腺穿刺吸引細胞診検査は増加傾向にある。しかし、診断の際には、画像診断の進歩による微小な結節性病変からの穿刺吸引細胞診例である場合や細胞診の欠点でもある「病変の一部の細胞像しか反映できない点」などにより、診断が難しい症例も少なくない。今回われわれは穿刺吸引細胞診にて細胞像がアポクリン化生を示し、診断に苦慮した乳腺腫瘍2症例について組織診断と対比し、細胞像の再検討を行ったので報告する。【症例1】57歳 女性 左BD領域 0.9×0.11×0.8cmの腫瘤<細胞所見>採取されている細胞は比較的...
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Published in | Nihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 57; p. 311 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本農村医学会
2008
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1880-1749 1880-1730 |
DOI | 10.14879/nnigss.57.0.311.0 |
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Summary: | 【はじめに】近年、画像診断の進歩により、乳腺が細胞診検査の対象となる機会が増加してきている。当院においても乳腺穿刺吸引細胞診検査は増加傾向にある。しかし、診断の際には、画像診断の進歩による微小な結節性病変からの穿刺吸引細胞診例である場合や細胞診の欠点でもある「病変の一部の細胞像しか反映できない点」などにより、診断が難しい症例も少なくない。今回われわれは穿刺吸引細胞診にて細胞像がアポクリン化生を示し、診断に苦慮した乳腺腫瘍2症例について組織診断と対比し、細胞像の再検討を行ったので報告する。【症例1】57歳 女性 左BD領域 0.9×0.11×0.8cmの腫瘤<細胞所見>採取されている細胞は比較的多く診断可能と考えた。核腫大、クロマチン増量したDuct cellが、シート状~重積を示すclusterでみられた。さらに、核腫大、核大小不同、クロマチン増量し、大型の核小体をもち、比較的大きな胞体に好酸性顆粒を持つ細胞の大型clusterが散見された。また同様の所見を持つ孤立細胞も認められた。以上の所見からアポクリン癌が疑われた。<組織所見>肉眼的には不整形な1cm大の白色病変で、組織学的には軽度腫大した核を持つ乳管上皮細胞の乳管内増殖からなっており、部分的にアポクリン化生様の細胞がみられた。また紡錘形の筋上皮様細胞の増生と血管間質を伴っていた。アポクリン化生様細胞の核は腫大し、核小体も明瞭に認められ、泡沫細胞も部分的に認められた。以上からDuctal adenomaと診断された。【症例2】41歳 女性 左AC領域 0.17cm長Nippleから放射状に広がる不規則な低エコー腫瘤<細胞所見>採取されている細胞は比較的多く診断可能と考えた。核腫大、大型の核小体を持ち、胞体が泡沫状の広い細胞がシート状のclusterでみられた。以上の所見から『鑑別困難』悪性も否定できないとされた。<組織所見>円柱状の腫瘍細胞が乳管内に篩状構造、面疱状あるいは充実性に増殖していた。腫瘍細胞は細胞質に豊富な好酸性顆粒を持ち、核腫大し、明瞭な核小体が認められた。間質への浸潤は認められなかった。以上からDuctal carcinoma in situ with apocrine featureと診断された。【まとめ】症例1の乳管腺腫では異型の強いアポクリン化生細胞や上皮のシート状cluster、腺管状clusterなど比較的多彩な像を呈するとされている。本症例でもアポクリン化生細胞の異型が強く、それに目を奪われてしまい、その他の乳管上皮細胞clusterの所見を軽視したことがoverdiagnosisの原因であったと考えられた。症例2では採取された細胞はアポクリン化生を起こした腫瘍細胞であった。泡沫状の比較的広い胞体に核腫大、明瞭な核小体が認められ、細胞像からはアポクリン癌を考えたものの悪性と診断するには乏しい所見であった。今回われわれが経験した症例はアポクリン化生の異型が高度であった良性腫瘍例、腫瘍細胞がアポクリン化生を起こした非浸潤性乳管癌であった。今後、核腫大、明瞭な核小体を持ち、豊富な細胞質に好酸性の顆粒が見られた場合にはアポクリン癌の可能性も考えられるが、今回経験したような症例も念頭においた診断が必要と考えられた。 |
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Bibliography: | 2J264 |
ISSN: | 1880-1749 1880-1730 |
DOI: | 10.14879/nnigss.57.0.311.0 |