視線移動の反応時間差による精神作業性疲労の評価

本論文では,写真のレタッチなどの高負荷な頭脳労働を長時間行うことにより引き起こされる精神作業性疲労を定量化するため,意識的に視線を移動させるタスクにおいて眼球運動の反応時間を評価した.評価方法として意識的に視線を移動させるタスクはアンチサッカード課題を採用し,視線を向ける方向の指示は脳の前頭野や頭頂野での判断処理を必要とする色,形,文字情報を組み合わせて用いた.実験では 30 分以上の単純な繰り返し計算を模擬的な精神作業性疲労として用い,計算の前後で視線が指示された左または右方向に移動するまでの反応時間を計測した.20 ~ 40 歳台の成人男性 10名に対して実験を行った結果,形状や文字情報を...

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Published in日本写真学会誌 Vol. 88; no. 2; pp. 165 - 172
Main Authors 本田, 秀明, 津村, 徳道, 山本, 昇志, 井上, 薫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本写真学会 20.05.2025
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ISSN0369-5662
1884-5932
DOI10.11454/photogrst.88.165

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Summary:本論文では,写真のレタッチなどの高負荷な頭脳労働を長時間行うことにより引き起こされる精神作業性疲労を定量化するため,意識的に視線を移動させるタスクにおいて眼球運動の反応時間を評価した.評価方法として意識的に視線を移動させるタスクはアンチサッカード課題を採用し,視線を向ける方向の指示は脳の前頭野や頭頂野での判断処理を必要とする色,形,文字情報を組み合わせて用いた.実験では 30 分以上の単純な繰り返し計算を模擬的な精神作業性疲労として用い,計算の前後で視線が指示された左または右方向に移動するまでの反応時間を計測した.20 ~ 40 歳台の成人男性 10名に対して実験を行った結果,形状や文字情報を組み合わせた複雑な判断タスク時に,視線移動を行うまでの反応時間が遅れることが明らかになった.特に文字情報が意味する色を判断する逆ストループ課題を用いて視線移動の方向を判断させたとき,模擬的な精神作業性疲労の前後で p 値<0.05 の明確な違いを見出すことができた.
ISSN:0369-5662
1884-5932
DOI:10.11454/photogrst.88.165