沿岸環境と植物プランクトン増殖~現場観測と室内実験

沿岸海域の海水中で植物プランクトン増殖の窒素源になると考えられるのはNH4+,NO3 -,NO2 -,尿素および溶存遊離 アミノ酸である.これらの窒素源が実際の沿岸海域の海水中で,どの程度の濃度で存在するのかを検討した.さらに,複数の窒素源が同時に存在する環境下において,現場での優占種である植物プランクトンが,どの窒素源を利用するのかについて,主にこれまで著者のグループが得た現場観測と室内実験の結果を総合して考察した.その結果,植物プランクトンが沿岸海域の現場海水中で利用する窒素源は,それらの現場海水中の濃度とその変動から判断して,NH4 +,NO3 -,および尿素が主なものであると考えられた...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in沿岸海洋研究 Vol. 56; no. 2; pp. 97 - 103
Main Author 多田, 邦尚
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本海洋学会 沿岸海洋研究会 2019
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1342-2758
2434-4036
DOI10.32142/engankaiyo.56.2_97

Cover

More Information
Summary:沿岸海域の海水中で植物プランクトン増殖の窒素源になると考えられるのはNH4+,NO3 -,NO2 -,尿素および溶存遊離 アミノ酸である.これらの窒素源が実際の沿岸海域の海水中で,どの程度の濃度で存在するのかを検討した.さらに,複数の窒素源が同時に存在する環境下において,現場での優占種である植物プランクトンが,どの窒素源を利用するのかについて,主にこれまで著者のグループが得た現場観測と室内実験の結果を総合して考察した.その結果,植物プランクトンが沿岸海域の現場海水中で利用する窒素源は,それらの現場海水中の濃度とその変動から判断して,NH4 +,NO3 -,および尿素が主なものであると考えられた.また,この三つの窒素源のうち,NH4 +は常にNO3 -よりも早く利用されていた. 一方,尿素の取り込み方は植物プランクトンの種あるいは生理状態によって異なると考えられる.更に,NH4 +濃度の高い海域での珪藻類は,現場の光条件下でNH4 +を窒素源とすることで,NO3 -を窒素源とするよりも高い増殖速度を獲得していると考えられた.
ISSN:1342-2758
2434-4036
DOI:10.32142/engankaiyo.56.2_97