内湾の貧栄養化 -窒素・リン負荷量削減が海域のCOD,栄養塩レベルにおよぼす影響

窒素・リン負荷量削減が,閉鎖性海域の内部生産有機物,COD,栄養塩レベルにおよぼす影響を,約20年間の実測データにより調べた.東京湾・伊勢湾(三河湾を含む)・瀬戸内海のいずれでも,海水の全窒素濃度は窒素負荷量に比例して減少しており,年3%の割合で低下していた.一方,COD は横ばいの海域が多かった.全窒素を有機態と無機態に分けると,無機態(無機栄養塩)の減少が著しい.一方,有機態の変化は小さかった.このため,有機物量を示す指標であるCOD の変化も小さかった.湾内のCOD は,湾奥部のCOD によって決まっていると考えられた.このため,多くの海域では,全窒素濃度が下がっても無機態窒素(栄養塩)...

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Published in沿岸海洋研究 Vol. 52; no. 1; pp. 11 - 27
Main Author 藤原, 建紀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本海洋学会 沿岸海洋研究会 2014
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ISSN1342-2758
2434-4036
DOI10.32142/engankaiyo.52.1_11

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Summary:窒素・リン負荷量削減が,閉鎖性海域の内部生産有機物,COD,栄養塩レベルにおよぼす影響を,約20年間の実測データにより調べた.東京湾・伊勢湾(三河湾を含む)・瀬戸内海のいずれでも,海水の全窒素濃度は窒素負荷量に比例して減少しており,年3%の割合で低下していた.一方,COD は横ばいの海域が多かった.全窒素を有機態と無機態に分けると,無機態(無機栄養塩)の減少が著しい.一方,有機態の変化は小さかった.このため,有機物量を示す指標であるCOD の変化も小さかった.湾内のCOD は,湾奥部のCOD によって決まっていると考えられた.このため,多くの海域では,全窒素濃度が下がっても無機態窒素(栄養塩)のみが低下し,COD が下がらないこととなっていた.有機物をさらに粒状態と溶存態に分けると,粒状態は多くの海域で低下していた.一方,溶存態が微増の海域が多くみられた.窒素・リン負荷量削減による内湾の富栄養化対策は十分に機能しているにもかかわらず,溶存態有機物量が減らないため,COD では正しく評価できていないと考えられる.瀬戸内海は,面積あたりの窒素負荷量が東京湾の1/10程度の小ささである.瀬戸内海では,栄養塩濃度の低下による海洋生態系への影響が危惧される.
ISSN:1342-2758
2434-4036
DOI:10.32142/engankaiyo.52.1_11