全身性の間代性痙攣で発症したアルコール性乳酸アシドーシスの1例

アルコール性乳酸アシドーシスはアルコール常用者で栄養不良と脱水が契機となり発症する病態である.治療の遅延や著明な代謝性アシドーシスを呈する場合、死の転帰をとることが多いとされているが、日本では、ウェルニッケ脳症に比較すると、その疾患の認知度は低い。今回、我々は、全身性の間代性痙攣で発症したアルコール性乳酸アシドーシスの1例を経験したので報告する。症例は、62才男性。高血圧の既往あり、アルコール依存症、大酒家である。H22年11/21に、嘔気、および、1~2分間の全身性の間代性痙攣を認めるようになり、救急搬送された。来院時、意識はほぼ清明だがやや受け答えが曖昧であった。診察中、突然、2~3分間の...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 60; p. 46
Main Authors 大河内, 昌弘, 郷治, 滋希, 前田, 宗伯, 大野, 恒夫, 神谷, 泰隆, 後藤, 章友, 勝野, 哲也, 浅田, 馨, 岩間, 糾, 服部, 孝平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2011
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.60.0.46.0

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Summary:アルコール性乳酸アシドーシスはアルコール常用者で栄養不良と脱水が契機となり発症する病態である.治療の遅延や著明な代謝性アシドーシスを呈する場合、死の転帰をとることが多いとされているが、日本では、ウェルニッケ脳症に比較すると、その疾患の認知度は低い。今回、我々は、全身性の間代性痙攣で発症したアルコール性乳酸アシドーシスの1例を経験したので報告する。症例は、62才男性。高血圧の既往あり、アルコール依存症、大酒家である。H22年11/21に、嘔気、および、1~2分間の全身性の間代性痙攣を認めるようになり、救急搬送された。来院時、意識はほぼ清明だがやや受け答えが曖昧であった。診察中、突然、2~3分間の全身性の間代性痙攣を認め、意識消失した。尿検査では、ケトン体1+、蛋白2+、潜血-、血液検査では、WBC 10200、CRP 0.1、AST 40IU/L、ALT 21IU/L、γ-GTP 60IU/L、amylase 62IU/L、BS 99mg/dl、NH3 26μg/dl、Ca 8.7mg/dl、Mg 1.6mg/dl(↓) であった。血液ガス検査では、pH 7.316, PaO2 97.3, PaCO2 33.2, SaO2 96.1%, BE -8.5, アニオンギャップ 24.8mmol/Lとアニオンギャップの開大を認める代謝性アシドーシスを認めた。特殊検査では乳酸40.4mg/dlと上昇し, vitB1 41ng/mlと正常, アセト酢酸12.0, β-ヒドロキシ酪酸10.0, 総ケトン体22.0と正常値であった。頭部CT&MRIに異常認めず、腹部CT上、肝臓・膵臓・脾臓に異常を認めなかった。以上より、アルコール性乳酸アシドーシスと判断し、ブドウ糖含有の補液、VitB12製剤、Mg製剤、抗痙攣剤の治療を開始した。入院後、代謝性アシドーシスは重炭酸塩の投与に急速に改善され、乳酸値も正常化した。加えて、入院後、痙攣発作の再燃は見られず、後遺症なく、改善した。
Bibliography:RKS2-8
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.60.0.46.0