トカラ列島周辺海域の底質分布とその制御要因

トカラ列島周辺海域において実施した海底地質調査航海GB21-2及びGB21-3では,102地点で表層採泥を実施した.おおむね水深800 m以上の平坦な海底には泥質堆積物が分布し,多くの地点で強い生物擾乱を受けている.砂質堆積物や礫,露頭の分布は,必ずしも浅い水深には限定されないが,島嶼部や浅海域およびその周辺では生物源または非生物源の粗粒物質が多く観察された.こうした底質分布は生物生産の場である島嶼部や浅海域に加えて,海底下の堆積物供給源となりうる海底火山の存在に規制されていると思われる.島嶼部周辺で多く見られるリップルなどのベッドフォーム,露頭や礫質堆積物の分布は,本海域で蛇行する黒潮の強い...

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Published in地質調査研究報告 Vol. 74; no. 5-6; pp. 259 - 286
Main Authors 鈴木, 克明, 板木, 拓也, 山﨑, 誠, 千徳, 明日香, 有元, 純, 片山, 肇, 兼子, 尚知, 徳田, 悠希, 清家, 弘治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター 28.12.2023
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ISSN1346-4272
2186-490X
DOI10.9795/bullgsj.74.5-6_259

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Summary:トカラ列島周辺海域において実施した海底地質調査航海GB21-2及びGB21-3では,102地点で表層採泥を実施した.おおむね水深800 m以上の平坦な海底には泥質堆積物が分布し,多くの地点で強い生物擾乱を受けている.砂質堆積物や礫,露頭の分布は,必ずしも浅い水深には限定されないが,島嶼部や浅海域およびその周辺では生物源または非生物源の粗粒物質が多く観察された.こうした底質分布は生物生産の場である島嶼部や浅海域に加えて,海底下の堆積物供給源となりうる海底火山の存在に規制されていると思われる.島嶼部周辺で多く見られるリップルなどのベッドフォーム,露頭や礫質堆積物の分布は,本海域で蛇行する黒潮の強い影響を示唆する.コケムシ類の分析結果,サンゴ類の分布,及び浮遊性有孔虫の群集・サイズ分布・保存状態の検討から,黒潮は底層流を通した力学的な影響とともに,生物群集組成やその体サイズなど生物学的な影響も同時に堆積物に与えている可能性が示唆された.
ISSN:1346-4272
2186-490X
DOI:10.9795/bullgsj.74.5-6_259