急性大動脈解離手術時に重度下肢虚血を呈した一症例

【はじめに】 心大血管手術では体外循環が用いられ,大腿動脈を送血部位とすることが少なくない.大腿動脈送血時の合併症として送血末梢側遮断による下肢虚血障害(3%)が報告されている.今回, Stanford A型急性大動脈解離 (以下AAD-A)に対し緊急手術を施行,左総大腿動脈からの送血により横紋筋融解症,重度運動障害,重度感覚障害を合併した症例を経験したので報告する. 【症例紹介】 47歳男性.診断名:AAD-A.身長175.0cm,体重63.2kg,BMI20.6.既往歴:高血圧.現病歴:2011年12月胸痛・呼吸苦出現,翌朝胸背部痛増強したため他院へ搬送,緊急手術目的に当院へ搬送,同日手術...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 31; p. 4
Main Authors 福家, 晶子, 金森, 太郎, 市原, 哲也, 小川, 優美, 坂倉, 理子, 井上, 武彦, 平川, 功太郎, 金子, 弘子, 佐々木, 史博, 三輪, 快之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2012
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.31.0_4

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Summary:【はじめに】 心大血管手術では体外循環が用いられ,大腿動脈を送血部位とすることが少なくない.大腿動脈送血時の合併症として送血末梢側遮断による下肢虚血障害(3%)が報告されている.今回, Stanford A型急性大動脈解離 (以下AAD-A)に対し緊急手術を施行,左総大腿動脈からの送血により横紋筋融解症,重度運動障害,重度感覚障害を合併した症例を経験したので報告する. 【症例紹介】 47歳男性.診断名:AAD-A.身長175.0cm,体重63.2kg,BMI20.6.既往歴:高血圧.現病歴:2011年12月胸痛・呼吸苦出現,翌朝胸背部痛増強したため他院へ搬送,緊急手術目的に当院へ搬送,同日手術. 入院期間:17日,転院後1ヶ月で独歩獲得し自宅退院.術式:基部~半弓部大動脈置換,送血部位:左総大腿動脈.手術中の末梢側遮断による左下肢虚血時間は約4時間,その後遮断解除し血行再開.合併症:左下肢横紋筋融解症(CPKmax95381),重度運動障害,重度感覚障害.コンパートメント症候群は否定.なお,対象者には本報告に際して事前に説明し同意を得た. 【理学療法経過】 POD2:抜管後に理学療法介入.足背動脈触知可,明らかな冷感・色調異常.左下肢筋痛・腫脹・筋硬結著明,重度運動障害・感覚障害を認めた.筋痛により立位保持困難,立位練習と並行して関節可動域訓練,DYJOCトレーニング開始.POD6:平行棒内歩行開始,左下肢荷重困難だったため,起立台による荷重練習開始.POD12:補助具にて歩行練習開始.横紋筋融解症による筋痛・腫脹・筋硬結の軽減に伴い,術後約2週で運動機能はMMT1→2へ,感覚も大腿から下腿にかけては軽度鈍麻に改善.遠位においては表在覚・深部覚ともに重度鈍麻,痺れ残存.腫脹により早期から左足関節底屈拘縮を認め,退院時背屈-15°.なお理学療法介入後のCPK上昇は認めなかった. 【考察】 本症例では,筋痛・腫脹・筋硬結が著明,CPKも高値であったことから,術後早期の歩行練習の適応について判断に苦渋した.しかし,理学療法介入後も症状増悪がないことやCPK上昇を認めないことから歩行練習を開始し,補助具歩行まで施行できた.臨床的には,虚血肢の神経は4~6時間,筋は6~8時間,皮膚は8~12時間で不可逆的変化を生じると言われている.手術中の重症虚血肢に対し,虚血時間が許容範囲内であれば,重症度に関わらずリスク管理下にて歩行練習が可能であると示唆された.
Bibliography:4
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.31.0_4