急性膵炎・胆管炎を併発したLemmel症候群の1例

Lemmel症候群とは、十二指腸憩室が総胆管や膵管に機械的影響及ぼすことにより,肝胆膵疾患が生じる稀な病態である。その疾患名は比較的有名であるが、傍乳頭憩室の頻度の多さの割に、臨床的にその疾患に遭遇する機会はそれほど多くはない。また、Lemmel症候群は、保存的治療での再発の多さのため、内視鏡的乳頭切開術、外科的治療(十二指腸憩室切除、または、憩室内翻術、乳頭形成術、胆汁経路変更術(胆管切除および,総胆管空腸吻合または総胆管十二指腸吻合)などの治療法が勧めらており、手術適応については、慎重に判断する必要がある。今回、我々は、急性膵炎・胆管炎を併発し、画像診断上、Lemmel症候群と考えられた典...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 60; p. 48
Main Authors 大河内, 昌弘, 郷治, 滋希, 大野, 恒夫, 一尾, 享史, 神谷, 泰隆, 後藤, 章友, 勝野, 哲也, 浅田, 馨, 岩間, 糾, 服部, 孝平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2011
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.60.0.48.0

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Summary:Lemmel症候群とは、十二指腸憩室が総胆管や膵管に機械的影響及ぼすことにより,肝胆膵疾患が生じる稀な病態である。その疾患名は比較的有名であるが、傍乳頭憩室の頻度の多さの割に、臨床的にその疾患に遭遇する機会はそれほど多くはない。また、Lemmel症候群は、保存的治療での再発の多さのため、内視鏡的乳頭切開術、外科的治療(十二指腸憩室切除、または、憩室内翻術、乳頭形成術、胆汁経路変更術(胆管切除および,総胆管空腸吻合または総胆管十二指腸吻合)などの治療法が勧めらており、手術適応については、慎重に判断する必要がある。今回、我々は、急性膵炎・胆管炎を併発し、画像診断上、Lemmel症候群と考えられた典型的な1例を経験したので報告する。症例は、87歳女性。高血圧、脳出血後遺症で近医に通院していた。H23年3/4より、38℃台の発熱、上腹部痛を認め改善しないため、3/5に当院来院された。初診時、38℃の発熱に加え、黄疸、右季肋部~臍上部痛を認め、血液検査上、WBC14000/μl、CRP 3.1mg/dl、T-Bil 3.5mg/dl、AST 284IU/L、ALT 266IU/L、ALP 1700IU/L、γ-GTP 745IU/L、Amy 514IU/L、Ca 7.9mg/dlと急性膵炎・胆管炎所見を認めため入院とした。CT&MRCP上は、胆嚢~総胆管拡張、胆嚢結石を認めたが、総胆管結石は認めなかった。加えて、十二指腸乳頭部に、憩室内残渣を伴う4cm大の傍乳頭憩室を認め、憩室による下部胆管の圧排所見が見られた。さらに、軽度の主膵管の拡張も見られた。入院後、抗生物質、膵酵素阻害剤の点滴の保存的治療で、解熱が得られ、腹部症状、肝胆道系膵酵素も順調に改善した。急性膵炎・胆管炎の治癒後、ERCPを試みた処、Vater乳頭は憩室内乳頭となっていた。胆管、膵管のカニュレーションを何度か試みるも困難で、胆管・膵管造影は出来なかった。当患者は、今回、初発発作であり、保存的治療で軽快していること、また、高齢でもあるため、手術治療はせずに見合わせた。現在まで、退院後、再発なく、順調に経過している。
Bibliography:RKS3-13
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.60.0.48.0