新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる急性虫垂炎緊急手術症例への影響

目的:新型コロナウイルス感染症(corona virus disease 2019;以下,COVID-19と略記)のパンデミック(COVID-19 pandemic;以下,CPと略記)による外出規制や医療機関での感染対策は,急性虫垂炎を含めた腹部救急疾患への医療介入の遅れをもたらした可能性がある.今回,CPによる診療の遅れが及ぼす急性虫垂炎症例への影響を明らかにすることを目的に検討した.方法:2020年3月11日に世界保健機関よりCPが宣言された.その前後約2年間の計1,460日間(2018年3月12日から2022年3月10日)に当院で急性虫垂炎に対して緊急手術を行った症例を,CP前(n=21...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 56; no. 10; pp. 519 - 526
Main Authors 南, 貴之, 杉浦, 孝太, 久留宮, 康浩, 山口, 真和, 加藤, 健宏, 世古口, 英, 権田, 紘丈, 菅原, 元, 井上, 昌也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.10.2023
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2022.0087

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Summary:目的:新型コロナウイルス感染症(corona virus disease 2019;以下,COVID-19と略記)のパンデミック(COVID-19 pandemic;以下,CPと略記)による外出規制や医療機関での感染対策は,急性虫垂炎を含めた腹部救急疾患への医療介入の遅れをもたらした可能性がある.今回,CPによる診療の遅れが及ぼす急性虫垂炎症例への影響を明らかにすることを目的に検討した.方法:2020年3月11日に世界保健機関よりCPが宣言された.その前後約2年間の計1,460日間(2018年3月12日から2022年3月10日)に当院で急性虫垂炎に対して緊急手術を行った症例を,CP前(n=213)およびCP後(n=248)に分類し比較検討を行った.結果:当院来院から手術開始までの時間はCP前651±468分,CP後732±426分でありCP後で有意に長かった(P=0.005).壊疽性虫垂炎と診断された症例はCP前43.7%からCP後66.9%と有意に増加したが(P<0.001),術後合併症発生率に有意差は認めなかった.結語:CP後からの院内の徹底した感染症対策により,手術開始の遅れおよび壊疽性症例の増加を認めたが,術後転帰の悪化は認めなかった.待機可能な急性虫垂炎症例に対しては,院内感染対策による診療の遅れは許容可能と考えられた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2022.0087