後下膵十二指腸動脈瘤を合併した動門脈瘻を伴う肝血管腫の1例

症例は56歳の女性で,腹部膨満を主訴に近医を受診した.以前よりフォローされていた肝血管腫が経時的に増大し,新たに腹水も出現したため,精査加療目的に当院を受診した.腹部造影CTで肝右葉に11 cmの血管腫を認めた.門脈径は拡張し,動脈相から強く造影された.超音波カラードップラー法では,腫瘍の肝門側で門脈右枝と肝動脈の交通を認め,門脈右枝の血流は遠肝性で,左枝臍部と本幹の血流は求肝性であった.血管造影検査では,早期から門脈が造影され,また10 mmの後下膵十二指腸動脈瘤を認めた.門脈圧亢進に伴う腹水貯留と肝動脈血流要求量の増加による動脈瘤形成と考え,血管腫切除の方針とした.周術期の血行動態の変化に...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 57; no. 10; pp. 491 - 497
Main Authors 細井, 敬泰, 高山, 祐一, 高橋, 崇真, 前田, 敦行, 青山, 広希, 日比野, 佑弥
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.10.2024
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2023.0078

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Summary:症例は56歳の女性で,腹部膨満を主訴に近医を受診した.以前よりフォローされていた肝血管腫が経時的に増大し,新たに腹水も出現したため,精査加療目的に当院を受診した.腹部造影CTで肝右葉に11 cmの血管腫を認めた.門脈径は拡張し,動脈相から強く造影された.超音波カラードップラー法では,腫瘍の肝門側で門脈右枝と肝動脈の交通を認め,門脈右枝の血流は遠肝性で,左枝臍部と本幹の血流は求肝性であった.血管造影検査では,早期から門脈が造影され,また10 mmの後下膵十二指腸動脈瘤を認めた.門脈圧亢進に伴う腹水貯留と肝動脈血流要求量の増加による動脈瘤形成と考え,血管腫切除の方針とした.周術期の血行動態の変化による動脈瘤破裂を危惧し,術前に後下膵十二指腸動脈瘤に対して経カテーテル的動脈塞栓術を施行した.その後,開腹肝右葉切除術を施行し,術後経過は良好で第12病日に退院した.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2023.0078