膵管内乳頭粘液性腺癌の破裂による腹膜偽粘液腫の1例

症例は74歳の男性で,腹部膨満感を主訴に受診した.腹部CTにて腹腔内に多量の腹水の貯留を認め,膵尾部の3 cmの囊胞性病変との交通が疑われた.腹水穿刺を行ったところ,粘調度の高い腹水が吸引された.内視鏡下逆行性膵管造影検査では開大した乳頭から粘液の流出を認め,膵尾部に主膵管と交通する囊胞性病変と膵尾部主膵管の拡張を認めた.膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm;以下,IPMNと略記)の破裂による腹膜偽粘液腫と診断し,膵体尾部切除,脾臓摘出術,腹腔内粘液除去を行った.腹腔内には多量の黄色のゼラチン様物質が貯留し,膵囊胞の破裂部から盲囊...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 49; no. 10; pp. 1016 - 1022
Main Authors 桂, 彦太郎, 藤本, 康二, 古角, 祐司郎, 東山, 洋, 上原, 徹也, 小松原, 隆司, 錦織, 英知, 石井, 正之, 小泉, 直樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2016
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2015.0207

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Summary:症例は74歳の男性で,腹部膨満感を主訴に受診した.腹部CTにて腹腔内に多量の腹水の貯留を認め,膵尾部の3 cmの囊胞性病変との交通が疑われた.腹水穿刺を行ったところ,粘調度の高い腹水が吸引された.内視鏡下逆行性膵管造影検査では開大した乳頭から粘液の流出を認め,膵尾部に主膵管と交通する囊胞性病変と膵尾部主膵管の拡張を認めた.膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm;以下,IPMNと略記)の破裂による腹膜偽粘液腫と診断し,膵体尾部切除,脾臓摘出術,腹腔内粘液除去を行った.腹腔内には多量の黄色のゼラチン様物質が貯留し,膵囊胞の破裂部から盲囊内へと連続する瘻孔を認めた.病理組織学的検査所見では主膵管および分枝膵管にかけて粘液性高円柱状の異型細胞が増殖しており,膵管内乳頭粘液腺癌の破裂による腹膜偽粘液腫と診断した.IPMNは近接他臓器に穿破することがあるが,遊離腹腔へ穿破し腹膜偽粘液腫となることは非常にまれである.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2015.0207