思春期・青年期の身近なネットワークの構造と質:発達段階と性差に注目して
我が国の思春期・青年期の対人関係の研究は,主として特定の機能や特定の対象に焦点が置かれ,日常生活で両親や友人とどのようなやり取りが交わされているのか,その全容は十分つかめていなかった。本研究の目的は,コンボイモデルが変化する思春期・青年期にかけて,身近なネットワークから得られる社会的機能を測定し,関係性の特徴を発達段階と性別の違いに焦点を当てて描出することであった。小学5年生から大学4年生の801名の横断データを分析した結果,サポート提供者としての母親と友人の相対的重要性は具体的なサポート機能により異なる様相を示したが,ネガティブな機能の提供者は発達段階を通じて両親であり,特に母親は口論の主要...
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Published in | 発達心理学研究 Vol. 36; no. 1; pp. 1 - 12 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本発達心理学会
20.03.2025
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Subjects | |
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ISSN | 0915-9029 2187-9346 |
DOI | 10.11201/jjdp.36.0082 |
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Summary: | 我が国の思春期・青年期の対人関係の研究は,主として特定の機能や特定の対象に焦点が置かれ,日常生活で両親や友人とどのようなやり取りが交わされているのか,その全容は十分つかめていなかった。本研究の目的は,コンボイモデルが変化する思春期・青年期にかけて,身近なネットワークから得られる社会的機能を測定し,関係性の特徴を発達段階と性別の違いに焦点を当てて描出することであった。小学5年生から大学4年生の801名の横断データを分析した結果,サポート提供者としての母親と友人の相対的重要性は具体的なサポート機能により異なる様相を示したが,ネガティブな機能の提供者は発達段階を通じて両親であり,特に母親は口論の主要な相手であった。発達とともに各対象からのポジティブな機能提供は減少する傾向にあったが,自己開示は友人関係において上昇した。女子の方が母親や友人からサポートを得られやすく,父親のサポートは女子より男子の方が多かった。特にポジティブな対人関係機能が誰とどれくらいあるのかについては提供する相手,発達段階,および性別で異なることが明らかになった。【インパクト】本研究は思春期から青年期の対人関係の推移について,様々なやり取りを対象横断的に捉える尺度を用いて検討した。本研究により両親や友人との関係性の発達的な推移が明らかにされ,我が国における青年期の対人関係がネットワーク機能という枠組みで理解された。身近な対人関係の実態を機能や対象を網羅的に捉えるツールが提供され,発達研究や介入実践に資するアセスメントが可能になる。 |
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ISSN: | 0915-9029 2187-9346 |
DOI: | 10.11201/jjdp.36.0082 |