過去30年における新生児外科682例の治療成績
新生児外科全般の手術成績に関する報告は日本小児外科学会が5年ごとに行なっている全国調査以外には少なく, 特に一大学病院からの報告は散見される程度である.'当院では小児外科診療が開始され30年以上が経過したので, この30年を振返りその治療成績の進歩について検討した.1970年から1999年までに経験した新生児症例は682例で, 主たる疾患の内訳は先天性食道閉鎖症41例, 肥厚性幽門狭窄症54例, 先天性腸閉塞症117例, 腸回転異常症41例, Hirschsprung病44例, 直腸肛門奇形90例, 消化管穿孔49例, 横隔膜ヘルニア40例, 臍帯ヘルニア・腹壁破裂40例, 腫瘍性・...
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Published in | 昭和医学会雑誌 Vol. 62; no. 3; pp. 194 - 200 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
昭和大学学士会
28.06.2002
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Subjects | |
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ISSN | 0037-4342 2185-0976 |
DOI | 10.14930/jsma1939.62.194 |
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Summary: | 新生児外科全般の手術成績に関する報告は日本小児外科学会が5年ごとに行なっている全国調査以外には少なく, 特に一大学病院からの報告は散見される程度である.'当院では小児外科診療が開始され30年以上が経過したので, この30年を振返りその治療成績の進歩について検討した.1970年から1999年までに経験した新生児症例は682例で, 主たる疾患の内訳は先天性食道閉鎖症41例, 肥厚性幽門狭窄症54例, 先天性腸閉塞症117例, 腸回転異常症41例, Hirschsprung病44例, 直腸肛門奇形90例, 消化管穿孔49例, 横隔膜ヘルニア40例, 臍帯ヘルニア・腹壁破裂40例, 腫瘍性・嚢胞性疾患35例, その他131例である.非手術例82例を除く600例の手術死亡率は11.7%であった.これを時期別にみると, 1970-79年は20.0%, 1980-89年では11.0%とほぼ半減し, 1990-99年には8.0%とさらに低下した.最近10年間の新生児外科主要疾患の手術死亡率をみると, 先天性食道閉鎖症, 先天性腸閉塞症, Hirschsprung病, 直腸肛門奇形, 横隔膜ヘルニア, 腹壁異常は全国平均をそれぞれ下回っていたが, 消化管穿孔だけは50.0%と高い死亡率を示していた.また, 2500gr未満の低出生体重児も増加の傾向にあり, 176例を数えた.しかし, その手術死亡率は初期の41.4%から半減したものの, この20年間は20.4%と改善はみられていない.今後は, 消化管穿孔群や極低出生体重児の外科に対してより強力な治療戦略が必要である.また, 出生前診断の普及とともにより重症な横隔膜ヘルニアや腹壁異常群も増加するものと予想される.かかる新生児外科の治療成績向上のためには, 引き続き産科・小児科との密接な共同連携が欠かせない. |
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ISSN: | 0037-4342 2185-0976 |
DOI: | 10.14930/jsma1939.62.194 |